ニッケイ新聞 2008年6月7日付け
ローマで開催された食糧サミットは五日、何ら成果を得ることなく閉幕した。深刻な食糧危機に直面する被災国が、何ら訴えることなく討論だけで終わったと六日付けフォーリャ紙が報じた。食糧危機エタノール元凶説は、ブラジルの要請で宣言から削除された。
サミットの冒頭、国連は八億三千万人が飢餓線上にあることを訴え、世銀は二十億人が栄養失調になる可能性を発表したが、出席者に行動を促すに至らなかった。
食糧危機に備える食糧基金の創設では、三百億ドルの目標が三十億ドルしか集まらなかった。失望させたのは、出席者の頭が中世的で低次元の論議に留まったことだ。
ルーラ大統領主張の「エタノールは食糧確保と環境保全をまっとうする世界が求めるバイオ燃料で、低開発国の経済勃興にも貢献する」を、EU代表は売り込みの自己宣伝と批判した。
最終的に、エタノール元凶説を宣言から取り下げたものの、ブラジルの我田引水とする誤解は解けなかった。伯米両国が八〇%を生産するエタノールは、グローバルな見地で議論するとし、結論は見送られた。異常気象による食糧減産も、次回の議題に回された。
並行部会は、低開発国に利益をもたらし、食糧を確保するブラジルのプロジェクトに消極的であった。百以上の低開発国がエタノール生産に意欲はあるが、技術と資金がないため計画が頓挫しているというのだ。
技術はブラジルから導入しても、資金を先進国から支援してもらうことに抵抗があるようだ。ルーラ大統領がいう「油と炭で汚れた手」が、低開発国を食い物にし利益を貪ることを警戒しているためらしい。