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日系支援の基金を創設=ブラジル三井物産=先駆的な社会貢献モデル=両国で有機的に支える=将来は2百万ドル規模に

ニッケイ新聞 2008年6月7日付け

 ブラジル三井物産(中山立夫社長)は二月に日系社会を支援する基金を創設した。在伯グループ企業全体でバックアップし、現在は百万レアル弱(約六千五百万円)の規模だが、将来的には二百万レアルにまで増資し、その運用益を安定的に教育・交流関連事業に支援していくという。すでに日本の本社でもブラジル人学校支援を始めており、それと対になる有機的な日系社会支援であり、進出企業が日系社会を長期的に支援していく先駆的なやり方として注目を集めそうだ。
 中山社長は、「基金は利益につながらない事業ですが、なんとか百周年の節目に合わせようと、ビジネスよりも優先して具体化してきました」と強い意気込みをみせた。
 同社長は五日、戦略企画担当の浅野英樹取締役、目黒英久広報担当と共に来社し、基金創立の主旨を説明した。
 本社の槍田松瑩社長自らが経団連の日伯経済委員長、日伯交流年実行委員長として、両国間の交流促進に陣頭指揮をとっている。「商売だけでなく、人のレベルできちんと付き合っていきたいというのは、槍田社長の方針です」(中山社長)。
 本社では〇五年から在日ブラジル人学校四校に支援を始め、昨年は十校にまで増やした。各校あたり五百万円以内の教育関連品が贈られている。
 今年始まった「ブラジル三井物産基金」は二年越しの構想だった。百万レアル弱を在伯グループ企業数社(三井肥料、三井アリメントス、三井ガスなど)から集め、近日中にも日本側と対になるような教育支援の具体策が発表される段取りになっているという。
 将来的には基金を二百万レアルに増資し、その運用益をもって安定的に支援を続けていく方針。百周年の一時的な貢献で終わらせるのでなく、節目の年を記念して長期的な支援を始める点も新機軸といえそうだ。
 今後、教育・交流関係プロジェクトを一般から受付け、社内で審査して決めるという。「地道に活動している実績があるところ、人材を育てるものなどを優先する。箱モノ、イベントは対象にならない」(浅野取締役)という。
 同グループ全体としては、すでにカナダ三井物産で一九八一年に同様の主旨の基金を立ち上げ、主に教育・文化関係の日系社会への支援をしてきた。米国でも八〇年代後半に立ち上げ、運用してきた実績がある。
 日本では〇六年に環境基金を創立するなど、同社の社会貢献を象徴する事業といえそうだ。南米では今回が初めて。
 中山社長は創立した動機を、「日伯関係の基礎を作ってくれた日系社会への恩返しの気持ちです」と説明する。進出企業による新しい形の日系社会支援として注目を集めそうだ。