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移民百周年の意義=日本はアジア進出の飛び石

ニッケイ新聞 2008年6月5日付け

 日本人移民百周年に寄せて、パウロ・ヨコタ元中銀理事は、日本人移民の功績をヴァロール紙上で次のように評価した。同氏によれば「百周年記念とは時間の経過だけでなく、日伯間に築かれた不思議な信頼関係が大切だ」という。
 日本人は農業という地味な出発をして、文化を優先し、利益を追わなかった。言葉の壁もあったが、それが結果として信用につながった。ここが、他のアジア民族と日本人が異なる点だ。
 二十一世紀は、中国が未開発の油田を埋蔵するアフリカへ向かったのに対し、日本はブラジルに賭ける。日本はブラジルにとって他人ではなく、長く付き合った気心の知れた隣人だ。ブラジルはアジアを目指すとき、必ず日本を経由する。
 アジアには反日感情の残る国があるが、第二次大戦で日本方式を叩き込まれた世代が、現在の経済機構の基礎を築いた。物の考え方で、中国もインドも日本と一脈通じる。ブラジル人には、それがよく分かる。
 日本は、中国が向かったアフリカへ本腰を入れない。中国との摩擦を避けるためだ。それよりラテン・アメリカの雄で百年の交際があるブラジルを選ぶ。日伯関係は過去十年疎遠であったが、それは両国が構造変換の過度期にあったからだ。
 ブラジルは鉄鉱石の輸出国から鉄鋼の輸出国へ転進した。しかし、今は鉄鋼から新素材へ向かおうとしている。技術で二世代先を行く日本に、また教えを乞う。
 ブラジルも日本へエタノールの技術移転を行う。沖縄にペトロブラスの精製所を設け、ディーゼルとエタノールの混合油を生産し、東南アジアへ輸出する。これがきっかけで日伯共同自由市場が、生まれる可能性がある。農産物を除いて。