ニッケイ新聞 2008年6月4日付け
コロニアの一世女性は「主婦」という言葉をきけば、ピンときて、実体のイメージもわくだろう。日本では近年、この言葉が実感をともなわなくなり、その一つのあらわれとして、雑誌『主婦の友』が、五月一日発売の六月号が最終刊号になってしまった▼同誌は一九一七年に創刊された。九十一年の歴史にピリオドが打たれたのである。最盛期には発行百万部を超えていた。コロニアの主婦達の中には、渡航前愛読した人も多いだろう。ここ数年は七万部前後であったという▼この凋落のわけは何なのだろう。簡単にいえば、女性の生き方の多様化が要因とされる。「主婦」のイメージは、白い割烹着を身に付けて家事をこなし、育児にもたくさん時間を割く女性(もちろん、妻であり母親)だった。働く男性にとっては、留守をまかせれば、頼りになる存在、といったところか▼それが、現実はどうか。ジェンダーが盛んに議論され、社会的な性別がなくなっていく。職業を持つ女性も右肩上がりに増えた。またそうでなくては、日々の生活が成り立たない社会にもなった▼ここまで書いて、周囲をみると、コロニアで主婦らしいと見られる女性層は、すでにぴったり高齢層である。昔『主婦の友』を読んでいた人たちは、確かに現在も元気な人は主婦だが、世代が一つ、二つ下がると、まず主婦のイメージには結びつかない▼こうした言葉が死語みたいになる傾向に、歯止めがかけられないことに、ある種のさびしさを覚える。(神)