2012年に世界有数の富豪として世界ランキング7位になった事もある企業家のエイケ・バチスタ氏に、司法当局が15億レアルまでの資産差し押さえを命じ、エイケ氏が不満を漏らしていると17、18日付伯字紙が報じている。
1956年生まれのエイケ氏は、石油・天然ガス開発を手がけるOGXやエネルギー会社のMPXなど、EBXグループと呼ばれる企業集団を指揮し、世界で7番目となる300億ドルの資産を持つ大富豪だった。
ところが、2013年になって、OEXが採掘権を持つ油田の埋蔵量が予想以下だった事などが判明し、EBXグループの株価が一斉に急落。この影響でグループ内最大の株主でもあったエイケ氏の財産は大きく目減りし、2013年現在は10億ドルの赤字資産を抱えているとされている。
エイケ氏は、MPXの経営審議会からも退き、同社を売却してEBXグループの負債軽減を図るなどの手を打って再建を図ってきたが、今月に入り、司法当局が最大15億レアルの資産の差し押さえを宣告し、国内外の関係者を驚かせた。差し押さえの対象はエイケ氏の個人口座や家族に贈与した不動産などで、エイケ氏自身が住む家は対象外とされた。
今回の資産差し押さえは、連邦政府が力を入れていたエネルギーや資源開発、物流などの会社を立ち上げ、社会経済開発銀行(BNDES)などの政府系金融機関やブラジルの大手金融機関から巨額の融資を引き出した後、返済不能となって各金融機関に与えた損失を補償するためだ。
エイケ氏は石油埋蔵量に関する予備調査の結果を勝手に使うなどの方法で市場に混乱を招いたとして、その責任を問われている。だが、エイケ氏は「何も間違った事はしていない」とした上、自分が立ち上げたプロジェクトの恩恵は多くの人が受けたはずで、国外では賞賛の声が上がっているのに、国内では叩かれるばかりと心情を吐露。
「時計の針を巻き戻せるなら、こんなにたくさんの事を一度にやるなんて方法はやめる」「自分は中流階級出身で、元のクラスに戻っただけだ」「アスー港の時価は8億から10億ドルとされているが、評価額は100億ドルに達するかもしれないから、何かが残るだろう」などといった発言は、18日付エスタード紙やフォーリャ紙が掲載している。
ブラジルの高成長期にブラジルを代表する企業家と賞されたエイケ氏がラ米最大の債務王になった事は、BRICSの雄と賞されながら、現在は他の4国の後塵を拝しているブラジルの歩みにも似ている。