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『ブラジルから来たおじいちゃん』=老移民とデカセギの交流=近く水曜シネマで上映へ

ニッケイ新聞 2008年5月30日付け

 サンパウロに暮らす日本人老移民が日本を旅し、在日デカセギ・ブラジル人との交流を通して、自身の移民体験やアイデンティティーを辿るドキュメンタリー『ブラジルから来たおじいちゃん(栗原奈名子監督・〇七年・57分)』が六月十一日午後一時から、文協水曜シネマで特別上映される。
 昨年七月、海外日系人合同大会にあわせてCIATE(国外就労者情報援護センター)主催で初めてブラジル上映され、多くの反響を呼んだ同作品。今回はポ語字幕、音楽やナレーションを付けてのリメイク版の上映となる。同センターの佐倉輝彦専務理事は「九十二歳の大先輩移民が諭すように語る。移民史やデカセギの実際の生活ぶりも知ることができる」と太鼓判で推薦している。
 同作品は、毎年日本のデカセギを尋ねて訪日している紺野堅一さん(92)が、若いデカセギらと交流し、自身の体験を振り返るストーリー。「彼らの将来はいったいどうなるのか」「子供たちの教育の現状はどうか」。若い世代の仕事の苦労話に耳を傾け、子供たちに勉強の様子を尋ねる。
 公式ホームページによれば、「この旅は彼自身の人生を振り返る旅でもあった。『大日本帝国臣民』として、それともブラジル人として人生を終わるのか。レイルパス片手に新幹線、ローカル線、バスと乗り継ぎ、自分の足で歩きながら考える」とある。
 紺野さんは大阪府吹田市に半農半商の米屋の五男として生まれ、茨木中学校卒業後に上京。夜学に通いながら出版社の見習いとして働いた。日本力行会の海外学校を経て、三一年、りおでじゃねいろ丸でブラジルへ渡航した。
 出稼ぎのつもりで単身ブラジルに渡って七十三年。職業を十回変え、破産の憂き目にもあったが、今では三女のルシア・尚子さん夫婦とサンパウロで悠々自適に暮らしている。
 今年四月十八日に、旧神戸移住センターで特別上映され、好評を博した。六月十一日のサンパウロ上映では、栗原監督の舞台挨拶が決まっている。
 国立民族学博物館教授の中牧弘允さんは「一世紀を生きぬいた老移民がふりかえるみずからの姿。日本に来て見て聞いて語る在日ブラジル人の姿。そこに海外移住とデカセギが凝縮されたブラジル移住百周年にふさわしい珠玉のドキュメンタリーである」とホームページに感想を寄せている。
 なお、日程未定だが国際交流基金での上映も予定されている。
 【栗原監督】
 早稲田大学政経学部政治学科卒業。東京の出版社で働いた後、ニューヨークに居を移す。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス学科在学中にドキュメンタリー映画「ルッキング・フォー・フミコ」(93年)を制作。博士号を取得後、九八年に大阪の国立民族学博物館で特別研究員として上方舞を研究するために、日本に滞在する。現在は関西とニューヨークを行き来しながら、映像の制作活動を行っている。(ホームページより抜粋)。