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先住民絡む緊張が高まる=権利と利益を犯すか守るか=ロライマ、パラー、聖の3州

ニッケイ新聞 2008年5月24日付け

 二十二日付け本紙でも触れたパラー州ベロ・モンテ水力発電所に関する討論会は、エレトロブラスの技師襲撃事件後も続き、二十三日に閉幕したが、連邦警察(連警)が事件の背景捜査を継続。一方、二十二、二十三日伯字紙は、最高裁長官らによるロライマ州ラポーザ・セーラ・ド・ソウ地区訪問、サンパウロ州でのインジオ保護財団(Funai)関係者人質事件についても報じている。
 パラー州アウタミラでのベロ・モンテ水力発電所関連の討論会は、先住民六百~八百を含む二千五百人が参加。先住民らの抵抗が二十年近く続いている同発電所建設は、経済活性化計画(PAC)に組み込まれたこともあり、注目を集めていた最中の事件となった。
 技師襲撃は二十日の出来事だったが、連警は先住民らの山刀が一様に新しいことに注目。ビデオ解析により、非政府団体に関係する神父らが山刀を購入している様子がみつかったという。討論会の企画団体関係者は、山刀は儀式用で殺傷用ではないし、神父らも暴力行為を扇動するような人物ではないと擁護する一方、連警側は、先住民扇動などが判明すれば、犯罪として起訴する意向。
 また、水力発電所建設に不可欠の環境調査は、先住民の抵抗などで一年以上遅れているものも。建設予定地選定や環境への影響調査など、建設に先立つ分析や環境許可申請の基礎資料作成もかなわず、複数の省庁が解決の方法を模索している。
 来月の最高裁による先住民保護区の合憲判断を待つロライマ州での緊張も高まり、二十二日の最高裁判事らの訪問と平行し、警備のための連警や治安部隊倍増の発表。政府としては、最高裁判断に関わらず、非先住民の立退きを執行し、先住民保護の立場を貫く意向でいる。
 二十日~二十二日のサンパウロ州のFunai職員人質事件は、バウルの事務所閉鎖に反対するもの。Funaiがブラジリアでサンパウロ州先住民代表十二人との話し合うことを約束し、人質解放となった。
 ポルトガル人到着時から続く先住民の権利と利益を守る戦いは、容易には結論を出せない問題を抱えている。