ニッケイ新聞 2008年5月22日付け
EU執行委員会(EC)は二十日、EU圏内のエタノール生産に対する補助金制度の廃止を決定と二十一日付けエスタード紙が報じた。エタノール生産におけるブラジルの国際競争力は自他共に認めるところだが、さらにブラジルの役割が再認識されたとブリュッセル・エタノール会議に臨んだノゲイラ下議(PSDB=民主社会党)が述べた。
ブラジル政府が長年悩まされた農産物補助金制度で、EUが先手を打った。EUは補助金で執拗な態度を採る米国の逆行になるが、まだ万事解決ではない。しかし、EUがエタノールを「未来の燃料」と認め、補助金を廃止したことで流れが変わった意義は大きい。
ブリュッセル・エタノール会議では、食糧高騰とインフレが抑制されるなら、EUはエタノール生産を産業戦略として認め、ブラジルの活躍に期待するという。
現時点で交通機関の燃料として石油に代わるバイオ燃料は、エタノールだけだ。エタノール向け穀物消費を一%と限定するなら、食糧高騰の原因にならないとEUは考えているようだ。
EUは二〇一〇年までに、自動車燃料の一〇%をエタノール消費の目標としている。食費へのインパクトを考慮し、EU圏内で穀類は三%から六%までの高騰。その他の必需品は一五%までとしている。
エタノールは、EU始め世界向けに大量に必要となるので、可耕地の利用法が今後の重要課題になる。米国は二〇一六年、米国産トウモロコシの四三%をエタノールに向ける。これは、世界の食糧供給に多大な影響を及ぼすと見ている。
環境と社会への影響を考慮し、EUは、圏内へのエタノール輸入に厳しい監視をするという。EUはこれまで、エタノール生産にヘクタール当たり四十五ユーロ、合計で九千万ユーロの補助金を生産者に供与していた。
補助金廃止で浮いた資金はエタノール増産の研究開発と新たな資源開発に使う。EUは、石油の九八%を輸入に依存。石油はいつか供給停止の日がくる。人類は、石油に代わるものを早急に用意する必要がある。これは、引き戻れない道であるとEU代表がいう。