ニッケイ新聞 2008年5月17日付け
十六日付けエスタード紙によると、「サイエンス」誌が、農業大国であり、アルコール生産でも躍進中のブラジルへの警鐘ともなる研究を発表。内容は、窒素による環境破壊の脅威についてだが、研究者の中には、サンパウロ総合大学のマルチネリ氏らも含まれている。
窒素は、アンモニアなどにも含まれ、肥料の成分としても重要なもの。しかし、肥料の大量使用や、工場や車の排煙などで過剰に供給された場合、生態系を脅かすものとなる。
例えば、尿などのアンモニア態窒素が大気中に放出されるとスモッグの構成要素となる。スモッグ中の窒素化合物は、酸性雨となって草木を枯らす他、硝酸に変わり土壌の酸性化をもたらす。また、地中に戻った窒素が過剰となれば、森林の衰退をもたらす。
また、肥料として使われたりした窒素が亜酸化窒素ガスに変化すれば、二酸化炭素の二九六倍もの温室効果を持つうえ、オゾン層破壊などにもつながる。
また、野菜に吸収された窒素が人体に入った後に体外に排出された場合や、地中の窒素が硝酸態窒素になって水に溶けたなどで、川や海に入った窒素は、水を富栄養化させ、アオモの発生や水中酸素の不足を招く。河川の富栄養化による魚の大量死などは結構頻繁に起きている。
これらの脅威を取り除く方法の第一は、生活廃水などの浄化。またブラジル産のエタノールは、とうもろこし製に比べて肥料が少なくてすむが、それでも、肥料使用や燃焼に伴う窒素排出は否めない。ここで、肥料使用の制限や、工場や車の排煙の浄化が必要となる。
十日付けエスタード紙によれば、昨年のブラジルの肥料輸入は一七五〇万トンで、使用量の六四%。つまり、年間使用量は二七三四万トン余りとなるが、肥料輸入は増加の一途。その上、車も人も増加中では、窒素による脅威を減らしていくのは容易なことではない。