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移民史料館=本山省三氏が館長に就任=「新しく芸術的なものに」

ニッケイ新聞 2008年5月15日付け

 昨年十月末の大井セリア氏の退任により不在となっていたブラジル日本移民史料館の館長に本山省三氏が就任、十三日午後、記者会見を開き、新しい史料館作りに意欲を見せた。上原幸啓文協会長、栗原猛、関根隆範、山下リジアさんら運営委員会のメンバーも出席した。
 本山氏はサンパウロ大学の歴史学の教授で、サンパウロ人文科学研究所の理事長。九〇年~九七年まで史料館の館長を務めたことから、「十一年の溝を埋めながら、今後問題を解決していきたい。新しく芸術的なものになれば」と話す。
 続けて、今年が史料館開館から三十年目であることを踏まえながら、「当時の構想とは全く違うものとなっている」と現状を厳しく認識、収入源や専門家の確保などを早急に解決すべき課題に挙げた。
 サンパウロ大学の日本文化研究センターとの提携などは「現時点では難しい」としながらも、日本の大学との提携も含め検討していきたい考えだという。
 長年統合が〃理想〃とされてきた人文研との関係については、「まだそこまで考えていない」と含みを持たせ、栗原運営委員長が「布石として考えたい」と引き取った。

活性化に期待

 百周年を目前にし、メディアや多くの関係者からの日本移民に関する注目が集まるなか、館長不在という異常事態に今回、とりあえず幕が下りた。
 関係者はホッと肩の荷を下ろしたいところだろうが、重職を兼任する多忙な新館長がその手腕を存分に発揮できるのか、疑問視する声があるのも事実。
 この点について栗原運営委員長は、「知恵袋となって、将来の方向づけをお願いしたい」とその役割を位置付け、期待をかける。
 百周年のお祭り騒ぎは一過性のもの。日本移民の歴史を残すことこそが、将来を見据えたコロニア最大の責務ともいえよう。
 前館長の退任は、運営委員会との感情的なもつれが原因だったと聞く。同じ轍を踏むことなく、実務部隊である同委員会と両輪となり、過去と未来を照らす史料館作りに期待したい。          (剛)