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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年5月8日付け

 百周年記念硬貨の問題に関して、重要なことが一つ判明した。彫刻家の弁護士は、やはり記念通貨の著作権に関する損害賠償を考えていた。本紙取材に対し、彫刻家自身は「お金など請求していない。作者の名前をもっと出して欲しいだけ」と答えていたが、エスタード紙に大きく出された弁護士の記事をみると、そうではない▼たかだかインターネットに掲載された記念硬貨の画像にサントス上陸記念碑の図柄が使われているだけで「日本政府と著作権侵害について話し合う」と弁護士がいっているということは、もし本当に記念硬貨が流通していたらさぞや莫大な損害賠償請求をしていただろう、とも推測できる▼記念通貨の図柄変更を決めたことで、すんでのところで巨額な賠償金を払わずにすんだのかもしれない。鋳造を終えた記念硬貨を作り直すのは初めてだそうだが、実質の損害が一千万円で済むなら、数百万レアルとも噂される賠償金に比べれば遙かに安い▼移民百周年だからといって、必ずしも良い話ばかりが来るわけではない。場合によっては「ジャポネースはお金があるはずだ」的な発想で、何かを嗅ぎつけて寄ってくる場合もある。もちろん、好意で近づいてくる人を疑うのは失礼だが、注意は必要だ▼百周年はブラジル社会全体が祝ってくれており、規模が大きく関係者が多いだけに、前例のないことが起きてもおかしくない。特に十月には地方統一選挙を控えているので、思惑が入り乱れる可能性がある。全伯のあらゆる日系団体役員は、加熱しすぎず、妙な交渉は控え、慣れない大金が動くときは弁護士に相談するなどの気遣いが必要だ。(深)