ニッケイ新聞 2008年5月7日付け
Dieese(労組統計部)は五日、セスタ・バジカ(生活必需品バスケット)が過去十二カ月で最高三〇%も値上がりしたと発表した。今年一月から四月までに主要食品十三種類の価格は、全国十六首都で二〇%も高騰した。特に最近注目されるのは、物価高騰が機械的になったこと。
セスタ・バジカが最も高騰したのは、ベロ・オリゾンテ市とフォルタレーザ市。続いてサンパウロ市の二百二十七レアル八一センターボス。過去一年で値上がりした主なものは、フェイジョンと大豆油、牛肉、ミルク。
国際市場で話題となっている米の暴騰は、気候に左右される地域に限るようだ。ブラジルの場合は、気候ではなく原油暴騰による肥料や農薬などの農業資材の高騰だ。
ラテン・アメリカでは食品の高騰が、極貧層一千万人にとって死活問題となっている。ハイチのように過去七年、食糧不足が慢性化した地域は国家の崩壊前夜にある。エル・サルバドールやグアテマラの極貧層は、食品が買えないでいる。
国が国家として機能せず国民が飢えると、食を求めて難民の大移動が始まる。国連は、食糧危機が一億人規模の難民移動時代を引き起こすと懸念する。
食糧不足で食費が高騰する地域は、生産方式が原始的なのに、消費が確実に増えている。これは、国が指導するべきだと米農務省がいう。食糧を入手できない極貧層は、生まれつき生活能力も生産能力もない。極貧層を富ます処方箋はない。
農産物コモディティに金融機関が目をつけた。この動きに国連が危機感を示した。食品の値上がりは、需給法則によらず構造的に吊り上げられるからだ。コーヒーの木を一本も植えていないスイスが、コーヒーを輸出する。スイスは二〇〇八年、生産者がいないのに一千七百二十億ドルの農産物を輸出した。