ニッケイ新聞 2008年5月6日付け
ちょっと旧聞になり申し訳ないのですが、先月26日の日露首脳会談について少しばかり。ガソリン税で民主党と対立し国会が混迷しているときのロシア訪問であり、プ―チン大統領との話し合いでは、北方領土返還に関してかなりの進捗が期待されたけれども、やはり「交渉の継続」という曖昧模糊とした結論に終わったのは、残念というか―いささか無念に過ぎるような気もする▼シベリア油田の共同開発で合意したのは、それなりに評価したいし、両国の経済的な結びつきを強化する意義は認めるにしても、日本国民の最大の関心は歯舞や色丹など北方4島の返還であるのは間違いない。「北方領土を返せ」の運動を支持する作家(評論家)の上坂冬子氏などは、本籍地を国後島だったかに移したほどの熱の入れようである。ところが―近く退任するプ―チン大統領はどこまでも冷たい▼旧ソ連を崩壊させ新生ロシアを立ち上げた故エリツイン氏は、かなり乗り気だったし橋本龍太郎首相との協議でも「解決を目指す方向」を探る気配が強く「返還も近い」の感触を抱かせるのに十分な配慮があり、日本でも評判がよかった。それが―体調を崩しプ―チン政権が誕生すると冷淡な空気が膨らみそっけなくなる▼多分―後継者のメドベ―ジェフ氏も同じ路線を歩むに違いない。プ―チン氏の子飼いだし、軌道を踏み外すとは考え難い。7月の洞爺湖サミットにも出席し首相との会談も予定されているが、北方領土ではよほど強く迫らないと、禍を残すことになる。単なる「継続協議」では、ロシアの「時間稼ぎ」と受けとめられても仕方があるまい。 (遯)