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世界の食糧危機の中で=ブラジルへの批判は陰に潜む=期待される物、人、技術

ニッケイ新聞 2008年5月1日付け

 世界中に広がる食糧危機の問題解決のために国連諸機関が話合いを繰り返しているが、二十八、二十九日に持たれた会議前後の報道に、ブラジルにも関連したものが含まれている。
 現時点で国連農業機関(FAO)が実施している飢餓対策は、七三〇〇万~一億ともいわれる飢餓に苦しむ人々への食糧支援などだが、今回、その必要資金が、三一億ドルに上方修正された。これは、食糧価格の高騰やドル安、農業生産支援計画の具体化などによるが、世界各地では既に、食糧危機による暴動や政情不安なども起き、食糧供給だけでは解決出来ない状態になっている一方、資金の調達も遅れている。
 食糧危機の主な原因は、原油の高騰、農業部門への投資の不足、需要の高まり、先進国の補助金付き農業政策、気候変動、食糧輸出制限などだが、これらが複雑に絡み合い、終点が見えない食糧危機に、世界中の不安も高まっている。
 原油高騰は農業部門で使う肥料の生産などに関連するほか、バイオ燃料の需要促進にもつながることで、エタノール主要生産国のブラジルも食糧危機の原因国と批判を浴びていた。
 しかし、大統領自らも説明に乗り出したこともあり、二十九日、三十日付け伯字紙では、サトウキビによるブラジル産エタノールへの批判は収まり、その矛先はもっぱら、北米のトウモロコシや欧州の大豆といった、補助金付き政策をとる穀類利用のバイオ燃料生産国に向けられている。
 一方、ブラジルは、政府備蓄米の輸出制限は発表したものの、これは食料価格高騰などにより上昇中のインフレ抑制が主眼。小麦以外の穀類やエタノール原料のサトウキビは昨年以上の増収が予想されており、国内の食糧危機の懸念もないことで、国連はブラジルの輸出制限解除を求めている。
 三十日の時点では国連計画への資金協力についての報道はないが、ブラジルは、国連の飢餓長期対策の一部であるアフリカの貧困国への農業生産支援協力のための人材と技術の提供を既に決めている。また、暴動も起きた隣国ハイチへは支援物資送付を四月に実施。更に、今月中の農業技術者派遣と、再度の食糧支援を検討している。