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経常収支、ついに赤字=インフレは目前に=生産部門の空洞化が進行=こんな状況に誰がした

ニッケイ新聞 2008年4月30日付け

 中央銀行は二十八日、三月の経常収支が四十四億ドルの赤字となり、今年三カ月間の累計で百七億五千七百万ドルとなったことを発表と二十九日付けエスタード紙が報じた。赤字となった原因は、多国籍企業がドルの目減りを防ぐため本店へ利益送金を急いでいるためとされる。特に送金が多いのは、銀行と自動車組み立て企業だ。
 経常収支がこれほど悪化したのは、一九四七年以来の出来事だ。ブラジル経済の二本柱とされる経常収支とインフレが、急速に悪化したことを看過してはいけない。
 経常収支の挽回は可能だが、インフレも昂進することを覚悟しなければならない。貿易収支は八千八百万ドルの赤字と少ないが、舞台の背景が変わったことに国民は注目しなければならない。
 僅かの間に情勢が急速に変化したのはなぜか。まだインフレについて中銀報告がないが、五月は数々の価格調整がある。食品の高騰とともにガソリン価格の調整。中銀は目標インフレ率の上限修正を余儀なくされる。
 経常収支の赤字とは、資本収支以外の収支の崩壊を意味する。四十四億ドルの赤字は利益送金というが、外資の直接投資はよいことばかりではない。これは、生産部門の空洞化を物語ることをルーラ大統領も知っておく必要がある。
 中銀は三月末、金融機関や多国籍企業百社の資本収支は、年度決算で百億ドルの赤字と予測していた。それが四月二十八日、既に百六十六億ドルに達した。経常収支の赤字とインフレの再来は、同じ穴の化物だ。
 経常収支の悪化は、ドル安による輸出縮小と輸入激増のためという呑気な学者がいる。しかし、現実は輸出が再起不能なまでに打撃を受けているのだ。誰がタイスを殺したか。生産部門を空洞化させたのは、ルーラ政権といわざるを得ない。
 輸出の伸び一三%に対し、輸入は四四%増。この数字は、国内消費市場の過熱がもたらした。政府経費を毎年一三%増やし、インフレ体質を血液の中に住まわせた。詩篇四十二編を再読し、インフレの教訓を学ぶこと。