ニッケイ新聞 2008年4月30日付け
ジャクト社が創業六十年を祝うというので、ポンペイアを訪れた。
戦後の混乱期に生まれ世界有数の農機具メーカーへ育った同社も、始まりは小さな工場。創業者の西村俊治さんが同地を選んだのも、当時の終着駅だったからだとか。
「気づいた頃には従業員が五、六人いたと思う」と話すのは、長男の俊(たかし)さん。「父は朝早く家を出て、夜遅くに帰ってきていました」と振り返る。その背中を見て育った子供達が現在の発展を築き上げた。
西村さんには「分福」という言葉があるという。本業から生まれた福は、人づくり、教育という形で分けられた。そこから多くの人が巣立ち、そして今がある。
九七歳の俊治さんは、式典の日も杖を片手に元気な姿を見せていた。会場を包んだ拍手の大きさと、出席者の表情が、同氏の人柄を表しているようだった。 (ま)