ニッケイ新聞 2008年4月29日付け
【神戸新聞二十八日】最初のブラジル移民を乗せた笠戸丸が神戸を出港してから、きょう二十八日で丸百年。在日ブラジル人の自助組織「関西ブラジル人コミュニティ」(神戸市)が、ゆかりの地、神戸港のメリケンパークで二十七日開いた記念イベントには約三万人(主催者発表)が訪れた。今や三十万人以上とされる出稼ぎで来日したブラジル人の姿も目立った。一世から四世まで日系人の参加者に「今、望むことは」と聞いてみた。(今泉欣也記者、黒田勝俊記者)
ブラジルの伝統音楽ショーロの演奏に目を細めた宮原一雄さん(73)。一九六六年にブラジルへ移住した一世だが、今は長野県に帰郷し、大工として働く。出稼ぎのブラジル人の支援にもボランティアで携わる。「病院などで言葉が通じず困る人が多い。日本の生活に慣れる手助けをしたい」。
三世の石津フェルナンドさん(30)=愛知県豊田市=は、通信教育で母国の大学で経営学を学ぶ。十一年間の出稼ぎ生活を終え、七月に帰国予定。「お世話になった日本のために頑張って働いてきた。でも、私たちはブラジル人。次は祖国の役に立ちたい」と語った。
鎌田メリーサさん(15)は四世だ。三重県にあるブラジル人学校の高校一年生。一歳の時に両親と共に来日した。日本語もポルトガル語も話せ、親の通訳をすることも。去年、一人で一時帰国したブラジルで友達ができた。「お父さんは『日本がいい』と言うけど、私はブラジルがいい」。
イベントの準備をした三世の大学院生山本アナクリスチーナ・アケミさん(28)=西宮市=は「こんなにたくさん来てくれて感激」と声を弾ませた。「移民の苦労や功績のおかげで、日本人は今もブラジルで信頼されている。私も子孫であることを誇りに思う。日本人も、もっと移民のことを知ってほしい」。