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崩れ去ったブラジル安全神話=どこででも起こりうる地震=連絡網構築に政府も始動

ニッケイ新聞 2008年4月25日付け

 二十二日夜発生したサンパウロ州沖地震は、ブラジルには地震は起こらないという安全神話を打ち砕いた。震源地が海底であったため、大きな被害が出なかったが、サンパウロ州モジ市では二万人が断水の憂き目に会ったほか、壁などの亀裂や電気系統の短絡による火災発生などの被害報告も出されている。
 二十四日伯字紙によれば、モジ市の断水は、チエテ川上を通る送水管が破損したもので、送水管から漏れた水はあたかも滝のようにチエテ川に落下。復旧工事は夜を徹して行われたが、給水再開は二十三日八時ごろで、断水した地域全域に水が行き渡ったのは午後になってからだったという。同市では、地震発生直後に、大学など四校での授業も中止された。
 また、建物などの被害は、壁などに亀裂が入ったり、インターホンが不通となったり。サンパウロ市東部では、火災の発生一件と、家屋二軒が立ち入り禁止処置などの報告もある。サントス沖メルルーザにあるペトロブラスのプラットホームでも揺れたと報告があったが、操業に支障はなかった。
 専門家によると、ブラジル内の地震は大陸プレート内で発生する地震のため、マグニチュード(M)三程度までのものが多いが、予知は困難で、M六以上の地震も起こりうる。今回のサンパウロ州沖地震で放出されたエネルギーは二〇キロトン(広島原爆の破壊力に相当)で、Mが一つ変わるとエネルギー量は三〇~三二倍になるという。
 また、昨年来、M四を超える地震が続いていることから、二十三日には大統領府で地震対策会議がもたれ、専門家からは、観測点を四〇増やし、連絡網構築をとの要望が出された。
 現在の地震観測点は約五〇カ所だが、基準が統一されていない上、機材も老朽化。観測結果の速報がされているのは四カ所のみ。大半は水力発電所近辺に設置されており、アマゾンなどは観測網がない。
 これらの観測点を結ぶネットワークの構築や、地震の傾向分析をするブラジル版地震予知連絡会の骨組みはこれからという所だが、二〇〇二年発表の研究によれば、国内には地震を引き起こす可能性のある断層は四八あり、どこででも地震が起こりうる。また、M五以上の地震は五年周期、海岸部を震源とするものに限れば一五~二〇年周期で起きているとの報告もある。
 体感度や被害の程度は、地域の地盤(岩盤か砂や粘土質かなど)によっても違うが、一般的に岩盤上は揺れも被害も少なく、砂や粘土の上では大きい。また、国土の多くは危険度〇のブラジルだが、アクレ州は危険度四など、地域差があり、建築基準も異なっている。