ニッケイ新聞 2008年4月19日付け
相次ぐ大油田の発見などで、昇り竜に見えるペトロブラス(PB)の公約は、環境にやさしい商品開発と、環境を壊すことなく発展することの二点。ところが今回、その公約に偽りありとして、PBの環境保護キャンペーン用広告二種(本紙面掲載分とは別)の使用禁止命令が出された。
十八日伯字紙が報じた記事によると、広告禁止令を出したのは、国家広告規制審議会(Conar)。十七日の会合において大多数の同意によって決まったという。
一方、審議会に訴えていた原告は、サンパウロ市、サンパウロ州、ミナス州の環境局と、グリーンピース、地球の友などの非政府組織(NGO)。来年一月に導入されるディーゼルの硫黄分削減基準(最高五十ppm)を満たす意思のない公社が、環境保護、環境保全を謳っていることはおかしいというのが、告訴した理由である。
ディーゼルに含まれている硫黄は、環境汚染物質の最たるものの一つで、発ガン性の問題や、心臓疾患や呼吸器系疾患の原因物質として騒がれてきた。大サンパウロ市圏の大気汚染は悪化の一途だが、昨年発表されたサンパウロ総合大学(USP)の実態調査によると、大サンパウロ市圏での大気汚染が原因とされる死者は年二千人。この結果を国内の主要都市にも適用した場合、大気汚染によって生じる医療費などの経費は、年に十億ドルに達するともいわれている。
地球温暖化まで考えれば、グリーンランドの氷原に大きな亀裂が入ったことや、南極大陸の氷も縮小しているなど、問題検挙にいとまがないが、サンパウロ市の大気汚染源の九十%が車の排気ガスであることを考えると、燃料生産に当たる企業の責任、努力はもっと問われても良いものの一つ。
実際、原告の一つのサンパウロ州環境局では、一九九五年以来、PBはもっと汚染物質の少ない商品を出すべきだと訴え続けてきたという。
今回のConarの決定に対し、PBは控訴する姿勢のようだが、原告側は、「今回の決定によって、Conarは、企業の便宜を図る組織ではなく、消費者の側に立つものだとの姿勢を示した」とするとともに、今回の勝利は、他の企業も含めたすべての広告主にとって大きな挑戦であり、社会が企業の実態に目を向け続けていることの一例とも位置付けた。
広告によってきれい事を訴えても、企業活動そのものがその言葉と裏腹なら、莫大な利益を上げ、社会活動などにお金をかけても、国民の心は離れていく。
ちなみに、PBが生産しているディーゼルの含有硫黄の量はサンパウロ市などの二百三十七市では五百ppm、それ以外の五千参百の市町村では二千ppmだという。