ニッケイ新聞 2008年4月18日付け
土地なし農民運動(MST)に関わる人にとって、忘れられない一九九六年四月十七日。この日、パラー州カラジャスのエルドラード地区で、州道封鎖の農民排除に動員された百五十五人の軍警により、農民十九人が殺され、六十九人が負傷した。以来、この月は、血塗られた四月の意味から「赤い四月」と呼び習わされるようになった。
MSTにとって、「赤い四月」は単なる追悼記念ではなく、農民の土地への定着と農業生産への投資を求めていく長い活動の節目でもある。毎年、繰り返される政府への要求は、その書類が黄ばんでしまったというほど長い時間をかけた戦いとなっているが、今年もまた、事件の起きた十七日を中心とした抗議行動が全国で繰り広げられている。
十七日の伯字紙によると、抗議行動は、伝統的な道路封鎖のほか、州や国の機関の建物ならびに連邦貯蓄銀行(CEF)、ブラジル銀行(BB)支店への侵入など。十六日に抗議行動が行われたのは十五州と連邦区。十六日だけで五十三件の抗議行動が起きたほか、十七日には更に行動が広がると予告されている。
これらの抗議行動の中でも、以前から通告されていたのはカラジャス鉄道の占拠で、アジェンシア・エスタードによれば、十七日午前中に既に占拠が行われたほか、セルジッピ州シングーの水力発電所や高速道路の料金所占拠が予定されているという。
MSTのリーダーによれば、十七日以降の抗議行動は、政府との交渉の進展具合で決まるというが、MSTの要求を受けた政府の約束はなかなか実現しておらず、十五日以前の四七件の抗議行動も含め、「赤い四月」は延々と続きそうだ。
今年のMSTの要求は、全国にいる家なし農民一五万世帯が定着することと、農業生産ならびに既に土地に定着している農民向け住宅の整備への公共資金からの投資となっているが、各地のCEFやBB支店への侵入は、住宅向けの低額融資の交渉を行うため。
自治相によれば、MST農民たちへの住宅供給資金は一億六千万レアルが用意されているが、実際に使われているのは四千万レアルのみ。十七日に予定されているMSTとの交渉では、六月までにと約束された住宅整備計画が具体的に話し合われるというが、MST側は、その他、Vale社の公団化交渉も盛り込んでくる可能性がある。
事件の翌年提供された現場近くの十九ヘクタールの土地は17・デ・アブリウと命名され、六百八十七家族が入植したが、今は四千人の住む土地となり、土地が不足してきているとともに、上下水道などのインフラも整っていないという。