ニッケイ新聞 2008年4月18日付け
アジアで始まった新型インフルエンザ・ウイルスの潮流がEUと米国へ渡り、最終的に南米へも到来の恐れがあると国連の世界保健機関(WHO)が十六日、警告をした。同ウイルスは遺伝子変化を遂げながら、伝染性を強めている。
今回のインフルエンザは、第一次大戦で猛威を振るったスペイン風邪に匹敵すると見られている。スペイン風邪は仏独両軍に多数の病死者を出したため休戦となり、第一次大戦の終焉に至ったらしい。
WHOは、ブラジルにも水際作戦で伝染の阻止に努めるよう通告してきた。WHOはアジアの六カ所で異なるウイルス(H3N2)を採集し、ワクチンの開発に努めている。これまでに南米を除く地域で五%から一五%の人が何らかの風邪に感染し、五百万人が同病と見られ二十五万人以上が死亡している。
ブラジル保健省は、二種類の風邪があるという。普通は高熱と筋肉痛、のどの炎症、空咳を伴う。新型インフルエンザは潜伏期間があり症状はすぐに表れない。アジアからEUや米国へ上陸するまで、九カ月かかった。発生源がアジアというだけでウイルスの正体は、分かっていない。
ブラジルへ上陸するにも、しばらく時間がかかると思われる。媒介は輸出入品や旅行者を介して広がる。ブラジルとアジアを結ぶ空路は少ないため、感染の確認は遅れる。南米以外の国々では予防接種を行っているが、ブラジルはまだ対策態勢がない。
伝染が容易で危険な季節は、冬と雨期らしい。ブラジルのような亜熱帯性気候の国は、雨期が危ない。ブラジルはアジアほど生体動物の売買はないので、感染性は低い。注意すべきことは、これからアジアとの通商が増えるので人的交流も高まることだ。