ニッケイ新聞 2008年4月4日付け
工藤章・三菱商事中南米統括(CEO)が帰国するにあたり、佐々木修・ブラジル三菱商事社長が中南米最高責任者(CRO)に、近藤正樹氏が同社長に就任した。移民百周年にあたって独自の記念プロジェクトを計画している同社。二日、近藤新社長とともに本紙を訪れた工藤、佐々木両氏が対伯投資の現状、今後の抱負を語った。
工藤氏は、九八年のリオ支店長を皮切りに、〇〇年から、ブラジル三菱商事社長、〇二年には、ブラジル商工会議所の会頭も務めた。
〇三年からは中南米全体を統括、「一年の六割はブラジル国外だった」ほど、多忙な日々を送る一方、同年、戦後移住五十周年祭典委員会に一千本の桜を寄贈するなど、コロニアとの関係も強かった。
九八年のブラジル経済混乱で対ブラジルへの評価が落ちた時期から、本社に対して〃未来の大国〃をアピール、「〇五年頃から地に足がついたのでは」と胸を撫で下ろす。
「一生懸命、耕したつもり。これからは日本でブラジルの応援団長となって、種蒔きは後任に期待したい」と佐々木修・中南米CROに水を向ける。
「三十二年のラテン経験の集大成にしたい」と意気込む佐々木氏は、〇六年八月にブラジル三菱商事社長として赴任。七五年の入社後、スペインで語学を磨き、前任地はチリに五年勤務したラテンアメリカのエキスパート。製鉄・機械部門が専門。
「ブラジルは様々な資源を持つ中南米屈指の市場。結果を出していきたい」と力を込める。
ブラジル日本移民百周年・日伯交流年にあたり、「三菱関連企業十三社で作る菱友会を中心に、日本語学習者に対する支援やIT分野においての人材育成プロジェクトを昨年から温めてきた」と語り、「六月の式典後には正式発表できるのでは。〇八年だけというわけではなく、多年的に行なっていきたい。ブラジルのイメージを変える機会にしたい」とも。
二日に着伯した近藤新社長は、コーヒーを中心とした食料部門に携わってきた。メキシコに二年、コロンビアに四年と中南米経験も豊富で、コーヒー輸出大国であるブラジルには、幾度となく訪れている。
食料の供給体制を構築したいとの考えも示しながらも、投資に関する重大案件はエタノールが検討されているという。
工藤氏は、日本でガソリンに対するエタノールの混合率が三%とされていることに関して、「これでは他の国に先を越されてしまう」との危機感を示す。
続けて、同社の全体収益のうち中南米地域からのものが二〇%を占め、その多くがチリやペルーの鉱山への投資によるものが大きいことを挙げながら、「資源大国であるブラジルへは、伯企業とも連携しながら、積極的な投資を行なっていくべき」との考えも示した。
工藤氏の日本からのバックアップ、食料関係の専門家である近藤新社長就任などを踏まえ、佐々木氏は、「ようやく体制が整ったという思い。これからは〃三菱〃の名前をしっかり知ってもらう仕事ができれば」とやる気を漲らせていた。