ニッケイ新聞 2008年4月3日付け
ルーラ大統領は四月一日、労働組合の権限を強化し会計検査院(TCU)への報告義務を免除する法令を裁可と二日付けエスタード紙が報じた。労組は、全国の労働者から一日分の給料と会社側からほぼ同額を組合税として受領していた。大統領は「三十年間、労組の自治権獲得のために闘い、いまそれが成就した」と感慨にふけった。これから労組を監督するのは、組合税を納める労働者と経営者であるという。
労組は年間、組合税一億レアルを受け取り、それの用途を監査する機関がなくなった。これから労組の不都合な点は、労組総会で提議せよという。野党は、大統領の裁可を「ブラジルのモラル低下」と呼んだ。全ての自治体は、公金の費消用途をTCUへ報告する義務がある。労組だけが、不罰特権を得たと抗議した。問題は大統領自身が、労組のシンパだと糾弾した。
組合税の管理を労組に一任することの是非は、TCUご免で一件落着。大統領権限の度を越えたサービスといえそうだ。USP政治学部のロドリゲス教授が、今回の裁可はルーラ大統領が、仮面を外したもので予期はしていたという。
大統領は八〇年以降、政治の勉強に没頭し労働運動から離れていた。しかし、CUT(統一中央労組)の政治基盤作りに手を貸した。それは、労組幹部を政府の重要ポストへ据えたことといえそうだ。
CUT元理事長の労相任命が、それ。これはブラジルの労働運動が、「赤い貴族」の地位を得たのだ。労組幹部は、政府の重要ポストを次々獲得。特に労組出身者の下議が増えた。キナリア下院議長は、労組から政界入りを果たした。パロッシ前財務相も然り。
組合税の廃止が議題になったとき、労組の「組合税継続デモ」が首都で行われ、誰も騒がなかった。これは「無血革命」といえる。それまで労組幹部は、現在のような地位がなかった。そこで大統領が、城門の閂を抜いた。
城門の外には労組出身の二次軍が、多数待機している。労働組合は倒産することがなく、次々運転資金を投与される「株式会社」になったのだ。政府がいう労組改革は、国民をごまかす詭弁であるという。