18日、来年2月27日に発表される第87回アカデミー賞の外国語映画賞に対するブラジル代表作として「オージ・エウ・ケロ・ヴォルタール・ソジーニョ」(日本未公開。「今日、僕は1人で帰りたい」の意)が選出されたと発表された。
この映画は、現在32歳の新進監督のダニエル・リベイロによる独立資本系の作品だったが、今年3月に行なわれたベルリン国際映画祭で、特別賞のひとつにあたる「テディ賞」を受賞して話題となっていた。
10代の盲目の少年、レオナルド(ギリェルモ・ロボ)が、障害を気にする家族のやや過保護でさえある環境の中、学校で出会った少年ガブリエル(ファビオ・アウディ)と恋に落ち、自我に芽生えていく、この青春映画は、ベルリンでの朗報で公開前から注目を集めた。そして公開がはじまると批評家や観客から高い評価を受け、小規模な配給会社の作品ながら、公開週の興行成績ではハリウッドの話題作が居並ぶ中で5位を記録するなど、かなりのヒットにもなった。
この作品のオスカーへの推薦基準について、選考委員の1人である映画監督のジェフェルソン・ディ氏は「同性愛者への暴力が社会問題化しているブラジルでは、同性愛について描きたがる人は少なくない。だが、この映画は、それを暴力を通じてではなく、キスで性に目覚める少年を通して賢く描くことでブラジル社会を見事に描ききっている」と賞賛している。
同作品をオスカーへのブラジル代表作として正式発表したマルタ・スプリシー文化相も、「単にブラジルのことを描いているだけでなく、(世界的に関心の高い)同性愛の話が繊細かつ美しく描かれているので、世界のどこでも共感しうる話だと思う。ブラジルの映画史にひとつの新しい歴史を作りうる映画だ」と絶賛している。
11月には「ザ・ウェイ・ヒー・ルックス(彼の見え方)」のタイトルで全米公開も決まっている本作だが、ブラジル代表にこそなったものの、オスカーへの道はまだまだこれからだ。この外国語映画賞は世界各国から候補作が集まり、2月の授賞式で最終的に候補として扱われるのは、わずか5作品のみだ。
ブラジル映画の作品はこの賞が設けられた1947年以来、その5作品の中に過去4度入ったことがあるだけで、受賞経験は一切ない。
そんな中、この話題性の強い、国際映画祭でも既に好評を得た本作がどこまでやれるか、注目される。(19日付エスタード紙より)