ニッケイ新聞 2008年3月27日付け
【静岡新聞】家庭は崩壊し、就業年齢に達しないうちに過酷な労働現場で働く。基礎学力が育たず、日本の地域社会から孤立したまま成長していく―。浜松市繁華街での聞き取り調査を通して、南米日系人の青少年の教育や就労などの実態解明を進めてきた調査グループが二十三日までにまとめた中間報告で、日本で生まれ育った〃第2世代〃のこんな実像が浮き彫りになった。調査グループは二十五日に静岡市のグランシップで開かれる国際シンポジウム(外務省など主催)で詳細を報告する。
調査しているのは、浜松学院大や県立大、浜松医大、浜松国際交流協会と浜松市在住の日系人などで組織するグループで、昨年十月から週末の夜を使って十八回調査を実施した。
市中心部のコンビニ前やナイトクラブ、ゲームセンターなどに集まる日系人の若者約二百人に声を掛け、出稼ぎ目的で来日した若者を除く義務教育年齢期から三十歳までのブラジル人など四十七人(三月十五日までの集計分)に路上で聞き取り調査をした上で、うち八人にグループ単位で詳細なインタビューを再度行った。聞き取りでは(1)滞日年数(2)国内間移動(3)2国間移動(4)就学、就労の有無―など二十一項目に加え、暴力団との関係や夢も聞いた。
調査グループによると、親が帰国しても、母国に適応できないため日本に残って一人暮らしをする未成年や、親の離婚によって子どもだけでの生活を余儀なくされる事例も目立ったほか、学校に通わず基礎教育を受けていない実態も浮かんだ。
移民の教育問題に詳しい沢田敬人県立大准教授は「親や地域から見放された状況で一人暮らしをしている。社会とのつながりを欠き、社会性が失われている」と分析する。
その一方で、暴力団関係者から勧誘されたり、違法薬物の取引などの実態を知っていたりして、非合法活動に手を出しかねない環境下に置かれている現状も分かった。就業年齢前の違法な〃児童労働〃も当たり前のものとして受け入れていた。
調査責任者の津村公博浜松学院大准教授は「彼らは日本社会についての知識が不足し、生きるための問題解決力も未熟。学び直しの機会が必要だろう。地域社会がこのような状況に関心を持つことが問題解決への第一歩」と指摘している。