ニッケイ新聞 2008年3月26日付け
少なくとも五万四〇〇〇人が放射線療法を受けるための順番を待っており、治療開始までに数ヶ月はかかる。待たされることは命を削られることであるガン治療の実情が二十五日フォーリャ紙で報道された。
放射線療法はガン治療の根幹の一つだが、国家衛生監督庁が患者の健康を損なう危険のある旧型機材の使用停止を命じたことで、この数カ月間、放射線療法を受けたい患者の待ち時間はさらに長くなっている。
一例は、サンパウロ州ジュンジアイ市。市内の施設は新しい基準に適応しておらず、一年以上放射線治療を停止。患者はカンピーナス大学に送っているが、ここも需要が多く、順番を待つ長蛇の列。また、サンパウロ州サントアンドレ市のように機材の故障で対応できない所もある。
厚生省によれば、皮膚がんを除くガン患者は、今年だけで三五万一七二〇人に上ると見られ、そのうちの六〇%が放射線療法を必要とすると考えられている。放射線療法を行うことのできる治療施設は全国で一三五カ所あるが、設置されている機材は二六七台。少なくとも八五台は増やさなくては対応できないという。
治療施設や機材の普及率は地域差があり、南東部や南部では普及率が高いが、中西部、北東部、北部では普及率が低い。しかし、普及率だけでは実態を計ることは難しく、三〇〇〇人に対応できるサンパウロ市のガン・コントロール・センター(IBCC)はフル回転。新しい患者への対応までに三カ月はかかるという。ABC地区からの患者を一月に一〇〇人は受け入れているサンパウロ病院の待ち時間は半年だともいう。
問題は、ガン患者にとって治療開始の遅れは生存率低下を意味すること。手術後、四~六週間のうちに放射線療法開始が理想で、治療開始が早いほど、治癒率や生存率が高くなる。
年頭に乳がんの手術を受け、二月七日に抗がん剤による化学療法を終了、後は放射線療法開始を待つばかりという婦人も、「治療開始を待つ間に、治る可能性が減っていくのが怖い」と言い、放射線療法後に乳房の形成手術をしてからが生活再建と考えている。
政府は、放射線療法用の機材二四機(四七〇〇万レアル)の導入と、二〇のガン治療専門施設の建設(一億二〇〇〇万レアル)を保健関係の経済活性化計画(PAC)の一部として計画していたが、金融暫定税(CPMF)の廃止によって、実施できるか否かは微妙な状態だという。
放射線療法の中で統一医療保健システム(SUS)が占める割合は六~八割だが、命の砂時計の砂が落ちるのを見ている気分の患者や家族にとって、心休まる日はまだ遠い。