ニッケイ新聞 2008年3月21日付け
サウーデ文化体育協会(桂川富夫会長)が独自の百周年記念事業として進めていたマンガによる日本移民史(ポ語)『Banzai-Historia da Imigracao Japonesa』とマンガ日本史(ポ語)『Historia do Japao em Manga』第三版の刊行セレモニーが十九日夜、サンパウロ市議会貴賓室で行なわれた。満席となる三百人以上が駆けつけた。一日系団体としては非常に意欲的な取り組みで、意義深い企画。一般のブラジル人のほかに、全伯の日系団体や日本語学校での必須の書籍としても期待できそうだ。
監修を担当した二宮正人氏はじめ、野村アウレリオ市議、飯星ワルテル下議、ウイリアム・ウー下議、渡辺和夫元サンパウロ州高等裁判事、上原幸啓百周年協会理事長、後藤猛聖領事ら多数の来賓が出席、それぞれが祝辞を述べた。
二宮氏は、六世まで誕生した日系社会の発展と歴史を振り返ったうえで、「私も小さいときから父親が買ってくれた日本のマンガを読んで育った」と強調。
上原理事長は「はじめて移民史を勉強する人にはマンガは最適。日本史も要約されていてわかりやすい」と評価。日本人移民の農業での貢献を紹介したうえで「先人とブラジルに感謝の気持ちで一杯」と話した。
マンガ移民史は、日本人移民の開拓の苦労や農業への貢献をはじめ、笠戸丸の神戸港出航、平野植民地のマラリアによる悲劇、日本病院の創立、南米銀行やコチア産業組合の盛衰、救済会創設者の一人ドナ・マルガリーダ、戦時中の苦労や勝ち負け紛争なども織り込んでいる。百七十六頁で価格は三十レアル。五千部発行。
佐藤紀行フランシスコさんらがプロデュースし、〇四年十一月から計画。委員全員で登場人物のイメージや設定した。老移民が孫に自分の体験を語る構成だ。
イラストを担当した島本ジュリオさん(68・二世)はこの日、自宅のあるリオから駆けつけた。この道五十年のベテラン。サンパウロ州内陸部のボルボレーマ市の出身で、父親に連れられ各移住地を転々して幼少期を過ごした。「私も豆や米を入れた綿の袋を作り直した服を来て学校に通いました」と懐かしそうに笑う。
そうした自身の移住地体験をもとに、関係者に用意してもらった三百枚以上の写真で時代考証を重ねた。「描き終わるのに六カ月間かかりました」。
マンガ日本史は、初版が日伯修好百周年を記念して九五年に刊行され、第二版は〇一年に出された。今回は〇三年から準備を始め、十三年間分の動きを加筆訂正、表紙も入れ替えて第三版として出版した。百六十頁で価格は二十レアル。三千部発行。第二版までの計三千五百部はほぼ売り切っている。
桂川会長はセレモニー後、取材に応え「角が立たないような内容にするのが一番大変だった」。移民史マンガでは、見方が分かれる勝ち負け事件なども盛り込まれているためだ。今回、サンパウロ州教育局の有識者にも内容をチェックしてもらった。
「先人の苦労を知らない若い日系師弟やブラジル人にぜひ読んでもらいたい」と桂川会長。二つのマンガは移民史料館やサウーデ文協ですでに販売。問い合わせは同文協(11・5058・6958)まで。