ニッケイ新聞 2008年3月15日付け
今の世を嘆き哀しんでも致し方ないけれども、子殺しがのさばっているのは、いかになんでも情けない。岡山では4歳児に七味唐辛子を飲ませて窒息死させる事件があった。長男の高校生を殺した実母は、保険金欲しさの殺人と認めたのは長崎県。新生児の置き去りもいっぱい。臍の緒がついたままの放置もあり、これもまた病院などが処置に大困惑である▼こんな悪しき風潮が盛んなとき今度は奈良県で4ヵ月の次男を叩き、小突くなどの虐待で重体に追いやった父・松本一也(29)が逮捕され、母の琴美(21)は、あろうことか次男の腹に赤色のペンで「死ね」「ぶた」と書いた。しかも、赤ちゃんの両脚や肋骨は骨折しており、一ヶ月以上も放りっぱなしにされ、意識も回復していない▼親の虐待によって死亡する児童も年を重ねるごとに増えている。少し古い記録だが、平成12年から15年までに127人が死んでいるし、今は200人に近いのではないか。虐待死亡の児童のうち乳児38%、さらに4ヵ月未満が5割の数字をもっと重く見たい。こんな不幸な事件は、本来なら児を保護すべき父と母が、加害者になると聞けば、驚くしかない▼それにしても、なぜ我が児を―と思うが、子育ての辛さや面倒臭さといった些細なことが原因らしい。泣き止まない―むずかるのは、赤ちゃんの特権のようなものだが、若い父や母の怒りは爆発し殴打や折檻に走る。これはもう「父になる」「母になる」の資格が欠落しているとしか言いようがない。母なる愛が子育てには欠かせないし、泣けばあやすの大切さをもっともっと大切にしたい。 (遯)