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女性への暴行に取り組む=対策現場は暗中模索の状態=根底に潜む社会的性差の偏見

ニッケイ新聞 2008年3月14日付け

 男性から暴行を受けたという女性は減らず、基本的人権さえ奪われたりすることがある。八日付けエスタード紙によると、男性から何らかの暴力、いわゆるドメスティック・バイオレンス(DV)を受けた女性は五人に一人。加害者は夫と答えた女性は大サンパウロ市圏では二七%に上る。
 DVそのものは家庭内暴力とも訳せるが、子供から親への暴力と区別し、夫から妻への暴行をDVと呼ぶことが多い。ただ、DVには女性から男性への例もあり、「親密な関係にある者同士の間で、一方が他方を継続的に支配しようとすること」などとも定義されるが、八日の記事では、女性保護法に定められた加害者への矯正施設建設のことなども報じられている。
 この女性保護法は、二〇〇六年八月に成立したもので、この法律が作られるきっかけとなった女性の名でマリア・ダ・ペーニャ法と呼ばれることが多い。
 この女性は、夫から六年間暴行を受け、死にかけたことも二度。うち一度は背後からの銃撃で、これにより、一九八三年に下半身不随となった。以来二〇年余りを、治療や人権をかけての戦いに費やしてきた。
 二〇〇一年には、米州機構(OAS)が彼女の訴えを認め、セアラ州政府は殺人未遂まで犯した加害者を法的に取り締まらなかったとし、二万ドルの支払いを命じた。夫の逮捕はその翌年。DVがやっと注目され始めた頃ともいえる。
 その後、国際的支援もあり、罰則をより重くした女性保護法が制定されたのが〇六年だが、三五条にある女性への暴行を専門に扱う部署を設置したのは一二州のみ。加害者の本格的な矯正施設は前例がなく、今年建設されるリオ州ノヴァ・イグアスのものが最初。
 実際には、非政府組織などの取り組みもあるが、この問題と本格的に取り組むには、女性の保護、男性の収容、教育、矯正、心理的また精神的なケアなどを総合的に行う必要がある。
 専門家は、加害者の傾向として、うつ病、精神的に不安定、社会的孤立、低いセルフイメージ、被害者への責任転嫁、暴行などの否定や過小評価、アルコールや麻薬依存などを指摘。失業による経済的困難などが引き金となることも多い。女性は男性に隷属するものという社会通念や誤った性知識、暴力などへの認識を改めると共に、感情も含めた自己制御訓練も必要。社会的性差の偏見を取り除いていく歩みとも言える。
 十三日フォーリャ紙では十二日にセアラ州政府がマリアさんへの賠償金六万レアル支払いを確約と報道。やっと州が責任を認めた。