ニッケイ新聞 2008年3月13日付け
政府は十二日、三週間にわたり赤字が続いた対外収支を収拾するため、ドル通貨の暴落を避ける為替対策法を制定と十二日付けエ紙が報じた。輸出企業は製品販売代価のドルを一部だけレアルに換金し、国内へ送金する。また外国人によるブラジルへの確定利つき投資や短期融資に対する税率を引き上げる。市場に溢れるドルが、レアル高騰の原因となので流入に歯止めをかける。同対策法はマンテガ財務相とメイレーレス中央銀行総裁が、ルーラ大統領臨席のもとで決めた。
多くの輸出企業が青息吐息で天を仰ぐ中、ようやく為替対策法第一号が出た。国家通貨委員会(CMN)は、輸出業者による国内へのドル持ち込み制限と為替積立の減額について緊急会議を開き承認した。外国人の短期融資や確定利付き投資のドル持込にも、増税による制限を設けた。
ドルの暴落は輸入の激増にもつながり、輸出業者を窮地へ追い込んだ。ドル通貨は溶解し実体がつかめない先行き不透明感が、政府関係者の悩みであった。そのためブラジルの製品、特に加工品や半加工品が割り高になっている。
ブラジルは身分不相応な外貨準備高を抱え、国内から多くの批判を受けた。しかし、外貨準備高のために米不況から逃れたので、結果として正解であった。これからも豊富な外貨準備高政策を取り続ける。現在の外貨準備高は、一千九百四十二億ドルだが、十七日には二千億ドルに達する。
同法は、溶解するドル通貨を凝結したドル通貨にする対策といえそうだ。為替積み立て制度が廃止される。これは為替コストを減らすので、為替の安定につながる。輸出業者は、輸出から輸入を差し引いた利益分だけを、国内へ持ち込める。手続きは少し面倒で経費割高になる。しかし、レアルの暴騰を防ぐため仕方がないようだ。
為替対策法は、市場の活力を損なわずドルの目減りを防ぐので途上国にとって最も妥当であると市場関係者がいう。またドルの下落とコモディテイ市場の強気は、インフレをもたらす。できれば、ドル下落に基本金利の引き下げで対応するのが理想らしい。
ブラジル経済の基礎構造が健全で地上最高率の金利は、投機家の楽園である。世界中どこにも、こんな金儲けの条件が揃ったところはない。米不況で行き場のないドルは、いっせいにブラジルへ向かう。