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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年3月13日付け

 以前、日本経済新聞の記者からこんな話を聞いた。「日本国内の景気動向を知るのに、日本のデカセギ向けポ語新聞の広告欄を見ると、公の景気動向指数より、半年ぐらい前に特定の地域の企業が集中して求人広告を出しているので密かに参考にしている」▼先日、米州開銀が発表した世界のデカセギ送金動向報告は、その意味で興味深い。南米全体への送金額は増えているのに、ブラジル向けだけ減額した。〇六年には七三億ドルだったが、昨年には七一億ドルと4%も減った▼その主な理由は「レアル高ドル安の為替の影響」「昨年来の米国不況で大量帰伯者」「ブラジル経済の好況」だという▼それでもブラジルはメキシコに次いで世界第二位の受益国だ。送金の約半分は米国からだが、欧州からが31%を占め増加傾向にある。上昇するユーロにつられて移民労働者が欧州に移っている様が送金額に現れている▼多くの南米出身労働者がスペインに向かっており、今では人口の一割が外国人という状態になった。ところが昨年来、好況に影が差して移民問題が国民の関心事になった。先週末の選挙直前にマドリードにはいったブラジル人三十人が入国拒否され、ブラジルで大騒ぎになり外交問題に発展した▼伯字紙記事によれば、欧米でのブラジル人入国拒否多発は九〇年代初頭からで、実は「何を今さら」らしい。かつて英国はブラジルの航空会社に毎日二十席を入国拒否した帰伯者用に確保させていたとの報もあった。ブラジルの経済成長により発言権が増し「今さら」ながら言うようになったとも。こんな「デカセギ世界経済学」を研究する学者はいないものか。(深)