ニッケイ新聞 2008年3月12日付け
財務相会議出席中のブラジル中央銀行のメイレーレス総裁は十日、米国発金融危機の影響を途上国経済がどこまで耐えられるかは、中国の対応が鍵だと言明したことを十一日付けエスタード紙が報じた。そのような情勢の中、ブラジル経済が泰然としているのは不思議であり、金融危機の影響を避ける模範的手法を示していると同総裁が述べた。同総裁はブラジルが二〇〇八年、経済成長率四・五%を目標としているが、外資が引き続き流入するかは言及を避けた。
EU中央銀行のトリチェ総裁は十日、ブラジルなど途上国が世界を震撼させている金融危機の防衛に協力するよう呼びかけた。メイレーレス総裁は、トリチェ総裁の要請に応えて危機防衛の鍵は、豊かな国内消費市場を抱える中国経済にあると述べた。
中国経済が破綻したら、ブラジルも現状維持は困難と見ている。もしも世界が同時不況に陥るなら、ブラジルもそれから逃れることは難しい。ブラジル経済は二〇〇八年、〇・七%減速する。米不況は先ず中国を襲い、そしてアジア全域に伝染する。その後、国際経済へ波及する。
財務相会議が特に期待しているのは、ブラジルや中国などBRICS消費市場が堅実で、疲弊した米国からの輸入を増やし、米経済を救うまでに成長することを願っているという。
もしも、米経済がドル安になっても起死回生しないなら、中国が米国に代わって国際経済のけん引車になるのではないかと総裁は見ている。中国は輸出ばかりでなく、財政政策も堅実である。中国経済は二〇〇八年、輸出経済から消費経済へ入るため経済成長率は減速すると総裁はいう。
米国は財政赤字の問題を、自分で解決すべきである。銀行は、不良債券の総額を明かにするべきだ。そうしないと、蟻地獄は止まれない。開けた穴の大きさがハッキリすれば、再出発もできるはず。果てしないドルの下落で原油は、四月渡しの先物がバレル当り百八ドルにつけた。
ブラジルの輸出産業は、不安定な為替率で照準が定まらず困っている。問題はレアルではなく、底なしの穴に落ちて行くドルにある。ブラジル政府にできることは、堅実な財政政策しかないようだ。これは全通貨がドルの道連れにされ、賽の河原で石積みをさせられる不安のようだ。