ニッケイ新聞 2008年3月7日付け
二月に、サンパウロ総合大学の大学院生が、学会出席のためマドリードで飛行機を乗換えようとして入国を拒否され、学会出席もならずに帰国したが、五日にも、リオ大学付属調査研究所の院生二人を含む三十人近くが入国を拒否されたと六日付け伯字紙が報じた。
これらのケースは、年々増えている入国拒否全体から見れば氷山の一角。昨年、スペインへの入国を拒否されたブラジル人は少なくとも三千人。二〇〇六年には一日六人程度であったものが、昨年は八・二人。この二月には何と一日十五人が入国を拒否されている。
今回マドリードの空港で入国拒否された学生二人は、隔離拘束された形で十時間以上、飲食も出来ずに過ごしていたことが家族との連絡で明らかにされているが、彼らと共に拘束された人々は約三十人。四日夜リオを発った便で到着後、入国審査ではねられ、携帯電話を含む荷物を没収された上、離れた場所に連行された。そこでは食べ物も水も提供されず、外部との連絡もままならない。
フォーリャ紙によれば、入国のためには、ヨーロッパ滞在一日につき七〇ユーロの所持金、飛行機の往復チケット、支払済みのホテルの予約控え、雇用契約書などの書類が必要。ただし、旅行者全員の書類などを完全にチェックすることは困難で、青年や同伴者のいない三十から三十五歳くらいまでの女性、黒人やアラブ系で質素な身なりの人などが標的にされやすい。
六日から始まる学会で発表もすることになっていた学生二人は、ブラジル関係者らに連絡をとり、在マドリードのブラジル大使も交渉にあたったが、二人の旅行続行には至らなかった。六日のフォーリャ・オンラインによれば、二人は学会に参加することも出来ないまま、七日に帰伯する。
二月の場合もそうだったが、スペイン当局はどの書類が不足しているのかなどを明らかにしておらず、今回の学生の所持金不足についても、ブラジル通貨やクレジットカード、海外での払い出しもできる銀行カードも持っており、拘束ならびに強制送還の形となったことに誰も納得していない。
ブラジルでは、何の非もない旅行者などの入国まで拒否するスペイン側の出方に対する反発が日に日に強まっており、スペイン旅行のボイコットも起き始めている。また、ブラジルもスペイン人に対する入国拒否を行うべきだとする声もあり、一日当たりの拒否件数も含め、具体的な案が出される可能性が出てきている。