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最少の特定ビザと最多の永住者=デカセギ定住化を裏付け=永住すでに9万人突破か=ビザ延長厳格化も影響

ニッケイ新聞 2008年3月5日付け

 サンパウロ総領事館が先月末に発表した二〇〇七年の同館査証発給件数で、「日本人の配偶者、二世・三世およびその配偶者等」を対象とした特定査証の発給件数が〇六年から二〇%減少し、過去最低を記録したことが分かった。同館の査証発給総件数も前年から約一六%減って過去最低となっている。一方、日本国内で永住資格を取得するブラジル人の数は対前年一・五倍近いペースで伸びていることから、同館では在日ブラジル人の定住化が発給減の背景にあると見ている。
 サンパウロ総領事館が二〇〇七年に発給した特定査証の件数(概数)は、前年比二一・六%減の一万五七七四件。同館で特定査証を発給するようになった九七年以来、最低の水準となった。
 このほか、観光・商用などの短期滞在査証も三・六%減少。全体の件数も二万三六三八件(対前年比一六・六%減)と、デカセギ急増につながった九〇年の入管法改正以来、最低を記録している。
 同館査証班の港偉夫領事は、昨年の査証発給減少について、「在日ブラジル人の定住化が進んでいるためではないか」という考えを示す。
 滞日が長期化し、日本で永住者資格を取得したブラジル人の場合、帰伯・再訪日する場合に再入国許可を取得するため、新規の査証発給が減少しているとの見方だ。
 法務省入国管理局の「出入国統計」によれば、日本で「永住者」資格を取得するブラジル人は二〇〇〇年以降、〇〇年=九〇六二人、〇一年=二万〇二七七人、〇二年=三万一二〇三人、〇三年=四万一七七一人、〇四年=五万二五八一人、〇五年=六万三六四三人と、年間約一万人のペースで増えてきた。
 その数字が〇六年の統計では七万八五二三人と、〇五年から一万四八八一人急増している。
 〇五年に広島で起きた女児殺害事件など、外国人が容疑者となる事件が社会問題化した〇六年四月、入国管理局は「定住者」資格に「素行が善良であること」とする項目を加え、両国での犯罪経歴証明書提出を義務付けるなど、資格更新の審査を厳格化した。
 こうした流れを受けて、ブラジル人コミュニティの中で「永住者」資格へ切り替える動きが加速したと見る向きもある。港領事も「はっきりとは分からない」としながらも「その可能性もあるでしょう」と話す。直接の原因かどうかは不明だが、在日ブラジル人の定住化が査証発給減の背景の一つであることは確かなようだ。
 同領事はさらに、ドル安レアル高により、レアル換算の所得・送金額が目減りしていることも影響しており、新規査証発給減に繋がっているとの見方も示した。〇八年の件数については、特定査証は「予測するのは難しい」としながら、日本移民百周年・日伯交流年の影響で短期の査証は増えるだろうと語った。
 永住資格取得者の数が同様のペースで伸びていれば、〇七年末現在で既に九万人を突破していることも考えられる。デカセギ永住者十万人時代が現実になる日も遠くない。