ニッケイ新聞 2008年3月4日付け
◇昆虫の話(1)
鞘翅類、直翅類、脈翅類、膜翅類、鱗翅類、双翅類、多足類、蜘蛛類と種類も数量も非常に多い。そしてこれらに対する知識を欠いていると、ひどい目に遭う。オンサなどの猛獣よりも、たかが虫と侮るなかれ、一年間粒粒辛苦の農作物を一朝に失ったり、マラリアや熱帯潰瘍、デング熱などであたら一命を失ったりする。順を追って主なものを拾っていく。
鞘翅類(ベゾーロと一括して呼ばれる)
かぶと虫。大小種々あり、二センチそこそこのものから十五センチ以上になる大物もある。かみきり虫も大小種々あるが、中で面白いのはセーラ・パウ。セーラは鋸(のこぎり)を引く。パウは木、木を切るものという意であるが、枝を輪状に齧っていって切り落とすときに、いつも切り落とされる側にいて、枝ととともにストンと落ちるのもおかしなものである。尤も、切り落とした枝に卵を産み付けるので、そのためかもしれない。
大小の穀象虫。穀類を食い荒らすので、穀物の貯蔵にはこの駆除が肝要である。総じて、ゴルグーリョと呼ばれる。
テントウムシも大小あり、中には害虫を駆除する有益なものもある。
ホタル(蛍)
蛍は、日本のは腹部の末端から蛍光を発するが、ここのは、その外に眼のほうが光る。赤く、また緑黄色に光る。三、四センチに達する大きなものもある。日本人はこれをサカサボタルと呼ぶ。
直翅類
代表はバッタ。ガファニョットと呼ばれる。これが天候異変などの気象条件により、異常発生することがよくある。天日なお暗しというほどの大群が空を覆って襲来することがある。これにやられると、牧場も畑もたちまちのうちに丸坊主と化し、その損害は計り知れないものがある。
飛行機による殺虫剤散布をしても手遅れで、薬を撒いた時はすでに丸坊主になっていたということが多い。泥棒に追い銭である。尤も、このために他への拡散をふせぐことはできる。
グリロ(蟋蟀=こおろぎ)
少ない時は余り目立たないが、多いと着物を食い破ったりする。
紙魚(しみ)
書籍や記録の古いものを荒らすのは、日本も同様である。
蟷螂(かまきり)
日本と同様であり、益虫である。
カメムシ
クサガメに似ているのにペルセベージョがある。農作物や果樹に害を及ぼす。
サシガメに似ているのに、バルベイロがある。体長二、三センチで、主に土壁や椰子壁の隙間に好んで棲む。夜這い出して血を吸うことは、南京虫と同様であるが、これはシャーガス病というのを媒介するので、危険である。中、南米に普遍であって、これに噛まれても痛みを感じないので、何匹にも噛まれながら眠っているようなことが多い。
急性の場合は、悪寒、発熱(四十度くらいになる)頭痛が四、五日から一週間くらい続き、熱が下がると、慢性病症になる。悪性の場合は高熱、全身麻痺、嘔吐、下痢をともない、全身に浮腫ができる。慢性になると、甲状腺が腫れて大きくなり、大きな瘤ができる。脈が早くなり、血圧が低下、体がだるくて仕事にならない。頭にくると、動きや頭脳の働きも鈍くなり、魯鈍となる。
子供の場合は、発育不良を起し、馬鹿みたいになってしまう。その治療法は、今のところない。唯一の方法は予防にある。土壁、椰子壁、古くなった木造建築物に住まぬことである。やむを得ず住む場合は、硫黄かフォルマリン燻蒸をおこなうべきである。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(1)=獰猛なジャカレー・アッスー=抱いている卵を騙し取る猿
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(2)=示現流の右上段の構えから=ジャカレーの首の付け根へ…
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(3)=ジャカレーに舌はあるか?=火事のとき見せる〃母性愛〃
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(4)=スルククー(蛇)は〃強壮剤〃=あっさり捕らえ窯で焼き保存
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(5)=4メートル余りの蛇退治=農刀、下から斬り上げが効果的
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から連載(6)=伝説的大蛇、信じられるか?=残されている〃実在〃証拠写真
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(7)=両頭やミミズのような蛇も=インジオは怖がるが無害
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(8)=家畜連れ去る謎の牝牛=〝初〟アマゾン下りはスペイン人
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(9)=多彩なアマゾンの漁=ウナギ怖がるインジオ
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(10)=日本と異なる釣り風景=魚獲りに手製の爆弾?
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(11)=商品価値高いピラルクー=カンジルー、ピラニアより危険
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(12)=ジュート畑でショック!=馬をも飛ばすポラケー
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(13)=生殖の営み見せつけるイルカ=インジオは何故か怖がる
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(14)=聖週間の時期〃神が与える〃=魚の大群「捕らえよ」と
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(15)=柔和が裏目、哀しきジュゴン=漁師に習性知られ、あえなく…
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(16)=ミーリョ畑荒らす尾巻猿=群れの首領株仕留めて防御
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(17)=ケイシャーダ性質凶暴=遠雷にも地鳴りにも似る
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(18)=野性すべて備えた=南米産獣の王者=美麗な毛皮のオンサ
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(19)=カザメント・デ・ラポーザ=ここにもこの言葉「狐の嫁入り」
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(20)=狩猟で得られる肉の中で最高=パッカ、胆汁は血清のよう
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(21)=吸血蝙蝠、互いに毛を舐め合う習性=毒塗って放し、舐め合わせ駆除
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(22)=動作緩慢、泳ぐ「なまけもの」=アマゾン河横断の記録も
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(23)=「黒装束の曲者」ウルブー=保護鳥、「功」が「罪」より多い
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(24)=群鳥を圧するかのように=猛々しく鳴くアララの雌雄
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(25)=早朝、カノアを漕いで鴨猟に=まるで奇襲を試みる緊張感
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(26)=入植直後カマリオンに遭遇=敏捷、鎌で仕留められず
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(27)=飼われて家に居つく亀=猛毒、身を捨てて毒蛇を殺す
アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(28)=体が美しくて猛毒の蛙=解毒にはインジオの薬