ニッケイ新聞 2008年3月1日付け
二十七日本紙でパラー州のタイランジアから乱伐対策本格始動と報じたが、二十九日付けエスタード紙では、タイランジアでは製材所関係だけで六千人が解雇され、二十八日に市長が配った五千点の基礎食料品セットをもらおうと集まった人々は、朝の四時過ぎから列を作っていたという。
この基礎食料品セットの配布は、アマゾン乱伐対策の一つである「火の弓作戦」の状況視察に訪れていた国会議員や州議会議員らが市内に滞在している時を狙って行われたもの。市長はこれまでも折々に食料品セットを配ってきたというが、人口六万六千九百人の町で六千人解雇という事態が何を意味するかが如実に表れた食料品配布でもある。同市では当日、国会議員らも加わり、現状打破のための政策検討委員会を組織することを決めた。
一方、二十八日にサンパウロ市で開かれた写真展とフォーラムに参加した環境相は、違法な活動に従事する人々がその活動を離れることを促すため、違法活動を離れた人が食べていけるようにするための環境サービス資金開設を検討中と発表。失業者が出てから検討していては間に合わないが、一連の動きを見ていて気になるのは、計画性のなさや連携の悪さ、後手になる対策といった問題である。
三百人を派遣してのタイランジアでの監査活動も、書類の監査ができるのは国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)の職員のみで、現状では一日一件、未到着の職員が現地に到着しても一日二件の監査しか出来ない。Ibamaのコーディネーターの判断でも九〇の製材所を監査するには二カ月を要するなど、要員不足は明らか。Ibama職員や軍人らを乗せた車が着いた所には何もなく、先に現場に着いているはずのヘリコプター到着を待って場所を移動など、連携の悪さも見られる。
二十九日エスタード紙では、乱伐防止の目的で、農業融資を受けるための審査を厳重にするとも報じられたが、小規模農場への低額融資以外は、国立植民農地改革院(Incra)の登録番号と、環境基準に準じた用地利用をしていることの証明書または環境局に必要書類を提出した時のプロトコロ、事業を行おうとする地域の環境基準に異議がないとする証明書への署名の三点が必要。この基準の適用は五月から始められ、七月にはすべての銀行がこの基準に従うことになる。
とはいえ、作戦や計画はすべて、計画、実行に続くチェック、改善のサイクルが機能しなければ元の木阿弥。大統領はかつて官房長官にアマゾン問題の総括を命じたはずだが、誰が総指揮官を勤めるのだろうか。