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ドル下落で物価安定=巣立つブラジル、沈み行く不沈空母

ニッケイ新聞 2008年2月28日付け

 ドル通貨が二十六日、一・六八四レアルと一九九九年五月以来の最低水準へ下げた。二〇〇八年に入って五・〇%の下げだ。このドル値下げの影響は、レアルばかりではなくユーロや円、元にも響いた。
 ブラジルでも、ドル安による変化が見られる。中央銀行が、以前のように貪欲なドル購入を止めたので、全般にドル購入が止まった。一月に外貨準備高が七十二億ドルも増えたが、二月は十六億ドルだけだ。
 これは、中銀がインフレ抑制のために為替率を利用しただけといえる。昨年の第4四半期、IPCA(応用経済研究所)のインフレ率が、十一月の四・一九%から十二月四・四六%と上昇した。予測を上回って一月は、四・五六%へ達すると見ていたからだ。
 需要が予想以上に伸びていたので、基本金利の引き上げを避けるため消費者物価を枠に収めた。ドルを下落させることで、国内市場で輸入品と国産品を競争させ物価を押えた。そのため為替は、放置したと見る。こうして消費市場のインフレ率を、抑制した。
 ドルの下落は、ブラジル経済に副作用を起こすまでに至らなかった。サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のお偉方が過去三年、警鐘を鳴らしていた産業の空洞化も生産部門のスクラップ化も起きていない。ブラジル産業は、魚が水を得たように生産に意欲を燃やしている。
 設備投資も過去に、これほど大胆なレベルを見せなかった。奇跡でも起きない限り、ドルはこのまま丘を転がり落ちると見られる。FRB(連邦準備制度理事会)は、米経済のリセッション防止にしか目がない。現行の政策金利三・〇%は、先物金利市場から見て六月前に二・〇%へ下げ、健全な通貨の前にドルの凋落振りを見せる。
 ドルに対する拒否反応は、米国の金融資産が呪縛されていること。米国の金融市場をパヴロフの犬というのは、ウソではないらしい。犬はラッパを吹くと、反応するように躾られた。米国の一般投資家は、FRBのラッパで動く分別のない犬だというのだ。