ニッケイ新聞 2008年2月26日付け
ルーラ大統領とキルチネル亜大統領は二十二日、亜大統領官邸カーザ・ロザーダで濃縮ウランを生産する伯亜合弁企業を設立することで合意し、文書を交したと二十三日付けフォーリャ紙が報じた。合意文書はウラン用の高性能遠心分離機を開発し、伯亜両国が直面する電力問題の解決に供する。同文書には、戦略目的の核という表現が使われた。ウラン濃縮と核燃料開発は、核保有国では「核の軍事目的」の意味にも使われている。
伯亜核開発協定は、微妙な表現をした。戦略目的の核という傍ら、核燃料の時代に相応しい核開発プロジェクトという。連邦令では核の非平和的使用を禁じ、原爆を含む軍事目的を有する国と共同開発をしないとしている。
アモリン外相は、同文書に盛られた戦略目的の核開発が原爆製造ではないと否定した。ブラジルは核拡散防止条約(TNP)に加盟しておらず、米政府が抜き打ち査察を要請する可能性があると指摘した。
伯亜協定の要旨は、核以外では次の通りだ。一、両国はドルに代わる共通通貨の設定を目指す。二、両国は沿岸と領海を偵察する衛星の打ち上げを目指す。三、両国はナノテク開発プログラムを、立ち上げる。四、両国合弁の水力発電所をウルグアイ川に建設する。五、軍用車を開発する。六、両国は人的交流で一切の制限を廃す。
ブラジルは、独自開発の遠心分離技術を有するため国際機関の査察を敬遠している。しかし、米政府は欧米諸国がイランの核査察で悩まされているいま、このような核開発宣言が行われることを懸念した。
ルーラ大統領は、伯亜両国がエネルギー問題でボリビア・ガスに依存しないための核開発であると強調した。「核開発はエネルギーの構造的問題である。南米が水力発電やバイオ燃料、核燃料、ガスで取り込む共同戦略だ」という。
核の専門家であるピンゲリ教授は、核開発協定はアルゼンチンにとって旨みがないという。同国の原子力発電所は、自然のウランか含有量一%以下のウランで間に合っている。三%の濃縮ウランは、不要である。両国が開発資金を投じても、利益を得るのはブラジルだけと見ている。