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焼津母子3人殺害=担当検事「最高刑99年を望む」=サンパウロ市で21日に初公判=日本側捜査当局に賛辞

ニッケイ新聞 2008年2月20日付け

 〇六年十二月に静岡県焼津市で起きたブラジル人母子三人殺害事件で、日本政府の国外犯処罰要請に基づきサンパウロ州検察庁から起訴・逮捕されたエジルソン・ドニゼッチ・ネベス被告(45)の初公判が二十一日午後、サンパウロ市バラ・フンダの第一陪審法廷で開かれる。公判に先立ち十八日午後、担当のマルセロ・ミラニ検事(40)がニッケイ新聞の取材に応じた。検事は日本側捜査当局の努力を称えたうえで、「被告の犯行動機は恨み。犯行は残虐で極めて悪質。最高刑の九十九年に近い禁固刑を望みたい」と述べた。
 「日本の警察が送ってきた調書は、これまで見たことがないほどに完璧な出来栄えだ」――。ミラニ検事はそう褒め称え、「証拠も揃っており、有罪を立証するのに十分な内容だ」と強調した。
 被告の犯行動機については、「被害者と同棲中だった被告が二人の子どもに乱暴な振る舞いをし、それに対して女性が別居を申し出たことへの逆恨み」と指摘。被告とソニアさんにあったという金銭トラブルは犯行の主要因ではないと述べた。
 また犯行前日の十二月十七日、被告は子ども達のクリスマスプレゼントとして二台の自転車を購入、それをソニアさん宅に届ける名目で犯行に及んだと説明。さらに現場に残されていたナイフとロープは事前に用意したもので、「殺意をもった計画的な犯行」と位置付けた。
 さらに「ナイフは被害者を脅すためにつかい、殺害には苦しみを与えるためにロープで首を絞め殺した」と話し、その残虐な犯行内容を明らかにした。
 加えて事件後の調査で、ナイフを被告に売った店主が被告への販売を認めており、ロープも水産加工会社に勤めていた隣人に頼んでつくってもらったものと語った。
 ブラジルの刑法では殺人罪は被害者一人あたり、十二年から三十年の禁固が定められている。今回の事件の最高刑は三人を殺害した容疑で九十年、さらに十四歳以下の子どもを殺害した罪が加算される。最低でも禁固四十年の判決になる見通しだが、実際の収監期間は刑法で三十年までと定められている。
 判決の見通しについては、「日本側で今後おこなわれる嘱託尋問の手続き次第」とした。
 ネベス被告は〇六年十二月、当時交際していたブラジル国籍の女性派遣社員、ソニア・アパレシーダ・ミサキ・フェレイラ・サンパイオさん=当時41歳=宅で、ミサキさんとその次男を殺害、さらに自宅で長男を殺害した疑い。
 焼津市内で貸金やビデオ販売業などに関わっていたとされ、昨年九月に日本政府の要請に基づく三件目の国外犯処罰(代理処罰)として手続きされた。十月に捜査書類がサンパウロ州検察庁に届き、十二月十日に同検察当局が起訴、十五日にサンパウロ州サルタイヤ市に潜伏していた被告を地元警察が逮捕した。裁判は陪審制でおこなわれる。
■ブラジルの陪審制度■
 ミラニ検事と弁護士の原田清氏によれば、ブラジルの陪審員制度は、裁判所の要請で管轄内の各職業組合(シンジケート)などに所属する一般市民を対象に、候補者を募集することからはじまる。
 十八歳以上の成年男女が条件で、その候補者をくじ引き式で二十人ほどに絞り込む。後日、その該当者全員を召集し、不正が無いように裁判官の前でさらにくじ引きを実施、七人の正陪審員を選出する流れという。
 正陪審員らは判決公判での出廷が義務付けられている。法廷では七人の陪審員が事実認定と被告の有罪無罪を合議して決める。その内容を一人の陪審員が裁判官の諮問をうけて代表で答申する。
 裁判官は法廷における司会役となる。原田氏によれば、陪審員の意見はあくまで参考程度であり、実際には裁判官の判断で判決が下される。