ニッケイ新聞 2008年2月12日付け
八日のエスタード紙に、南マット・グロッソ州(MS)ドウラードス近郊でグアラニ族の子供が栄養失調で死亡という記事が掲載されたのを皮切りに、連日、インディオ、ドウラードという言葉がエスタード紙に出て来ている。
九日には、児童虐待などで保護された子供の養子縁組の際、国立インディオ保護財団(Funai)では同じインディオの部落内での養子縁組を優先させ、インディオ以外の家庭での養子縁組は裁判の差し戻しや破棄を申し入れているという記事。児童保護法をそのままインディオの子供にも適用しようとする司法判断に対し、インディオの子供は部族の外に置かれると、偏見など多くの面で苦しむから、部落の中に留めるべきだというのだ。
続く十日には、インディオの文化継承に関心を持つ若者減少とあり、十一日には、砂糖アルコールプラントの進出で、サトウキビの栽培や収穫などプラント関連の仕事をするインディオが増えてきたことへの危機感が書かれていた。
これらの記事を見ると、多くのインディオが保護区と呼ばれる地域に生活しているが、その生活には経済的な基盤の弱さなど、限られた土地で暮らすゆえに出て来る問題の数々が見えてくる。政府などから受取る社会保障プログラムからの収入に頼る人が多い中で、季節労働的要素が大きくても、企業からの給与を受取ることはインディオの人々の経済力向上につながる。
しかし、経済力もなく、血のつながりの強い者同士が小さな地域に暮らす中、内部抗争やアルコール中毒、暴力、麻薬、自殺といった問題が段々エスカレート。そこに知識の不足も相まって、児童虐待や、家庭内暴力、養子縁組などに結びついてくる。
しかし、インディオ保護区には、独自の文化や言語など、文化人類学的にその保護が重要とみなされている点も多い。その意味で、政府やインディオ自身の保護区拡大への努力も必要なのだが、現実には、政治的、司法的圧力により、保護区が削減されたり、新しい区域の指定が拒否されたりしている。九日の報によれば、サンタカタリーナ州では二〇〇七年に指定された保護区中三区が既に解除され、州内にはただ一つの保護区を残すのみという。
雇用が増え、現金収入が増えることは、ある面では良い。しかし、サトウキビ畑の重労働に駆り出されるインディオは、屈強で重労働にも耐え、結束して搾取に立ち向かうということも無いと雇用者側は考え、奴隷労働問題も起きる。しかも、経済収入が増えることで独自の文化や伝統を守ることへの関心や保護区拡大への関心が薄れれば、インディオの文化や社会は喪失、崩壊へと向かう。
少数派で、文化継承や出稼ぎ問題に直面する日本人、日系人には他人事ではない問題の一つである。