ニッケイ新聞 2008年1月31日付け
二十五日本紙にアマゾンの乱伐進行の記事が出たが、二十五日には、法定アマゾン地域(九州にまたがる五〇〇万平方キロの保護目的地域)内の乱伐の進む自治体リストが発表された。リストに挙げられた三六の自治体内での森林伐採面積は八月から十二月だけで一六三三平方キロ。実にサンパウロ市一つを呑みこんでまだあまる地域の木が伐採されたことになる。
伐採面積の筆頭はマット・グロッソ州(MA)のマルセランジアの一九五平方キロ。それをパラー州(PA)のサンフェリックス・ド・シングーの一四九平方キロが追うなど、上位一〇の自治体はみな五〇平方キロを超える。州別では、MA一九、PA一二、ロンドニア州(RO)四、アマゾナス州一の三六。
これらの自治体では発表と同時に伐採は禁じられたが、現実には二十六日フォーリャ紙に作業中のトラクターの写真が掲載されるなど、今後の監視の徹底が必要。また、三六自治体に対しての処置は、伐採禁止だけではなく、低金利で補助金付きの融資の停止、二月十五日までに発表予定の基準に沿った農地や家屋の再登録の三十日以内の実施など。違法伐採地からの産品の流通、加工販売も禁止され、これらの商品の売買、流通者も罰せられる。
これらの処置は、直接的には乱伐を食い止めるためであるが、乱伐は環境破壊だけではなく、国際的な信用も落とし、果ては地域の産品の販売低下にもつながる経済問題でもある。
ただ、これまでの傾向として、世界的な大豆や食肉価格の高騰を追うようにして伐採量が増えるという事実がある。また、南東伯や中西伯でアルコール生産のためのサトウキビ栽培増加に伴い、牧畜の地域が北上してきたともいう。
これら一連の乱伐対策の対象とされた三六の自治体の長や州知事らは、大半が政権与党のメンバー。しかし、与党に属すことが政府命令に黙従することにはつながらず、大豆の生産、輸出で世界的に名の知れた大豆王であるMA知事らは、伐採面積の計測値の見直しなどを求めている。
政府は二月からは監視活動強化のため、軍の派遣人員も増やす予定。一方、二〇〇四年の農地の再登録が失敗に終わったことや、贈収賄の存在、裁判所への抗告など、政府は現実を知らないとの批判の声もある。
しかし、山の斜面の木も伐採され、地滑り等の危険を指摘される箇所もあるなど、バリ島での温暖化対策をめぐる国際会議後に言われた「もう、もっと後でとは言っていられない」という言葉はブラジルの環境対策にもあてはまる。
二十四日来エスタード紙やフォーリャ紙に連日記事が出るアマゾン問題は、ブラジルや世界の現在と未来を決める問題と心にとめたい。