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9・11以来の金融パニック=経済は米国離れへ=白馬の騎士「途上国」来らず=死に体の米経済が巻き添え

ニッケイ新聞 2008年1月23日付け

 米経済のリセッションが濃厚となったことでEUを初めとする世界の金融市場が二十二日、パニック状態に陥った。サンパウロ市証券取引所も抗うことあたわず、六・六%も暴落した。これで二〇〇八年に入って累計で、一五・九三%の下げ幅となった。途上国経済の活力が金融危機を救うという予測は、見事に覆された。投資家にとって、世界中どこにも錨を下ろすところが無くなったといえそうだ。
 現在の国際経済は米国依存度が低く、米国発不況は深刻な事態に至らず、回避できそうだという憶測はものの見事に葬られた。米国発不況が、国際経済を巻き添えにしそうな気配は否めなくなった。
 火元の米国は、マーチン・ルーサー・キング追悼記念日で休日のため取引はなかった。しかし、EUの主だった金融市場は、9・11テロ以来の大幅下げとなった。この状況を二十二日付けエスタード紙は、次のように論評した。
 日本やEUの金融関係者は、業界が考えているパニック回避理論に疑問を抱き始めた。日本経済は牽引力が弱く、EUはインフレ健在で金利引き下げに踏み切れずにいる。このような状況下では、途上国経済に不確定要因を印象付けるだけという意見が多い。
 事態は最早、余り説明を要しないようだ。サンパウロ市証券取引所は、アレヨアレヨと思う間に暴落した。頭で考えるより感情が先走ったようだ。サンパウロ市証券取引所が一階にあるなら、二階にニューヨーク証券取引所がある。二階が崩れれば、一階に追いかぶさる。
 少し落ち着いて分析するなら、FRB(連邦準備制度理事会)は十二月、米経済の問題を政策金利の引き下げではなく、インフレの存在だと警告した。FRBは金利を〇・二五%下げて、引き止めにした。
 バーナンク議長が、リセッションはない。あるのは、活力を失った米経済だと喝破した。同議長は思い切った金利引き下げを行うが、問題は死に体となった米経済に再起の力があるのかということ。問題を先送りしただけだから、ツケを払うときがくるといった。
 国際経済が抱える問題の大きさは、ほとんど分からない。だからミクロ経済に不確定要因を生み出す。時々現象として表れるのは、氷山の一角である。関係者の多くは、銀行が不良債券を隠し、折りをみては出すと見ている。だから地震は定期的に起きる。