ニッケイ新聞 2008年1月19日付け
ニューヨーク証券市場の株価指数が暴落していることでマンテガ財務相は十七日、米国発金融危機の影響に対処するため、ブラジルは財政政策の強化へ力を入れる方針を表明と十八日付けエスタード紙が報じた。期待したバーナンクFRB(米州連邦準備制度理事会)議長の救援策はなく、ブッシュ米大統領が所得税や営業税の減税を示唆し景気対策を打ち出した。サンパウロ市証券取引所は十七日、株価指数を二・九六%下げた。
証券市場は二〇〇七年の努力を水の泡にして、二〇〇六年の水準へ戻した。サンパウロ市証券市場も米国の落ち込みを受けて、投資資金が音を立てて引いている。一月の下げ幅は累計で一〇・七二%、カントリーリスクは、黄信号が灯る二四六ポイントとなった。
証券アナリストの分析によると、現時点で米国の金融危機は三カ月位、まだ回復可能と見ている。年末まで続くなら、ブラジルのミクロ経済に影響を及ぼす前に政府は何らかの対策を打ち出す必要がある。
米金融市場の動向は懸念されていたことであるが、FRB議長の発言「減速経済に入るだけでリセッションはない。不動産ローンの焦げ付きは一千億ドル位の見込みで、支出を抑えた経済構造を立ち上げることが急務」は、金融市場に冷水を浴びせた。
この見方では、米経済がまだ悪化するという。米財務省のスタッフが、緊急事態の修復に奔走するほど泥沼にはまるといっているようなもの。FRB議長は、リセッションはないがインフレは止まったとしている。ここまではよい。
同議長は、投資家の神経を逆なぜした。「回収不可と思われる銀行の欠損、不動産市場の崩壊、不況リスクの上昇、期待はずれの雇用条件が金融市場を襲う。その上、経済指標はどれも予想を下回る」。これでホワイトハウスも米国会も、景気対策へ動き出した。
いままで米金融危機は、FRBの問題と思っていたらしい。FRBの苦戦を傍観していた輩には、金融危機はよい薬だと同議長は思っているらしい。
ブラジル経済は財政内容が堅実であれば、米金融危機の影響は軽微に済む。米国がクシャミをすると、ブラジルが肺炎を患った九〇年代とは違う。米国からやってくる荒波に備え防波堤となる国内消費市場が、ブラジルには築かれている。これが、二十一世紀型経済システムのようだ。