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インフレは食品から=食糧危機で世界情勢は一変する

ニッケイ新聞 2008年1月16日付け

 二〇〇八年は、食糧高騰の馬蹄とともに始まったと経済評論家のミング氏がいう。大豆の国際相場は、過去三十日間に一三・六%騰がった。食品業界で働く人は、その背景を熟知している。先ず大消費国の中国が、食糧に輸出税を課税した。穀倉地帯として期待されるアルゼンチンに、干ばつが襲ったなどだ。
 米食糧庁(USDA)は最近、過去二年の世界穀物消費が生産を上回ったと発表した。差は備蓄食糧で賄ったことになる。二〇〇八年も、同じことの繰り返しになると見られる。
 二〇〇七年は、食糧用の穀類をバイオエネルギー生産に流用しているという批判があった。しかし、その影響は年間、〇・八%の高騰に過ぎない。穀類消費による高騰は、三%である。食糧高騰の原因は、中国を初めとするアジア地域諸国の爆食にある。
 食糧生産に要するかんがい用水の重要性を、認識すべきである。一キロの穀類を生産するため、三トンの水が必要である。食糧輸出とは、同時に淡水も輸出しているのだ。古典経済学は、食糧の需給関係を保つために生産の奨励は絶対欠かせないといっている。
 そのような現象は、まだしばらく起きない。一キロの米を生産するより一キロの米を買う金を稼ぐ方が、得策だとのん気なことをいう国もある。そのような国は、食糧増産は、長い長い時間をかけて準備することを知らないからだ。
 ブラジル経済にも、見逃してはならない兆候は出ている。その一、ブラジル人消費者の平均食費は現在、所得の二九・八%を占める。ここに食糧価格に異変が起きれば、基本金利の引き上げくらいでインフレは治まらない。
 その二、二〇〇七年の大豆やトウモロコシ、牛肉輸出は、二百十一億ドルで全輸出の一三%を占めた。国際相場が高騰すれば、この割合は、さらに膨れる。その三、離農生産者の復帰による農地の高騰がある。牧場が穀類生産に切り替えられるのは避けられない。
 その四、農業資材や農機具の大量注文が、年々増加。その五、食糧高騰を機に道路や港湾、倉庫を整備しないなら、ブラジルは永久に何もしない。その六、遺伝子組み替えは、時代の趨勢である。理想主義は、いい加減にしないと時代の波にのり遅れる。