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政治は一寸先が闇=裏に隠された与野党の策略

ニッケイ新聞 2008年1月16日付け

 暫定金融税(小切手税)延長案の表決に臨んだ上議八十一人は、二つの発表をどう受けとめたのだろうか。一つは、昨年九月現在で過去十二カ月の国内総生産(GDP)が昨年同期比五・二%増と発表されたこと。もう一つは、ルーラ政権に対する評価が良いと非常に良いを合わせ五一%に達したこと。これを聞いたとき小切手税は、理由のいかんを問わず葬ろうと野党は、考えたに違いないと十四日付けエスタード紙が論評した。
 数字だけで見るなら連立与党は、上院に五十三議席を占める。しかし、必要数四十九票に四票足りない四十五票で、政府は敗れた。
政治と現実は、政治力学で決まらないらしい。次は次期大統領選で野党の海賊船が、遊覧船PT丸に衝突する可能性がある。
 政治家は、信用できない。野党リーダーのヴィルジリオ上議(PSDB=民主社会党)派二十人の中で七人は政府へ加担するはずだった。ブラジル経済が好調なことで小切手税延期は、流れとして当然だと誰もが確信していた。しかしフタを開けて見たら、そうは行かなかった。
 経済は連続成長により年間で五%以上の経済成長率達成を祝うという前夜に、政府敗退の冷水を浴びせられた。ルーラ大統領は、延長案承認のために一生一代の大博打を打ってPSDBと対峙したらしい。
 小切手税延期を承認すれば、次期大統領選で政権を野党に譲るというサインだったようだ。ルーラ政権が、築いた豊かな経済遺産を野党は引き継ぐ。仮に野党が小切手税を否決しても、政権を奪還すれば小切手税の復活は明白だ。しかし、裏をかき単独行動に走る知事らを押えたカルドーゾ前大統領の策略だと政府は思ったに違いない。
 小切手税の税収は、全額医療への充当という野党要求も政府は呑んだ。野党は、政府の容認を信用しなかったようだ。経済成長による小切手税の税収増を読んでいたからだ。小切手税を承認させれば、政府は不人気な増税や汚職などの不法手段による資金調達をしなくても済む。
 野党は残る三年のルーラ政権で、ルーラ大統領を有頂天にさせPT(労働者党)の天下をものにしたと思わせ油断させる。それは連戦連勝で有頂天のシーザーの耳元で「皇帝の権力も、ここが限界ですよ」とささやいたシナリオを復元すれば、大統領の政治生命も限界を演出できる。
 単純に計算すると二〇〇七年の一般税収の増加率は、小切手税の増加率より遥かに凌駕した。これは、大統領にとってレモンでレモネードをつくるようなもの。政府の浪費をごまかす隠れ蓑が、小切手税であったのだ。この小切手税を失ったことで、ルーラ政権は基本行政で支障を来たし混乱する可能性がある。
 ルーラ大統領の「貧乏人の味方帝国」は、小切手税廃止で継続が心配になってきた。しかし、予言は当たらないこともある。ブラジル経済が予想を上回って湯水のように公金をバラまけるなら、その限りにあらず。ルーラ大統領はツキ男らしいから、様子を見ようではないか。