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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年1月10日付け

 年明け早々、地元日系団体らが中心になって検討していた国士舘スポーツセンターの運営権を文協から受託する件に関して、白紙に戻すのみならず、批判的な内容の絶縁状ともいえる文章が評議員全員に郵送された▼これは時間をかけて交渉すれば、まとまる可能性のあった案件を、自ら断ち切るに等しい行為にもみえる▼八日にコチア青年などを中心とする代表者らが来社した折りに話してみた。やはり、文協会長選挙の影響が色濃く残っている問題だと感じた。現上原体制に反旗を翻した小川派の支援者が国士舘関係者であり、三つどもえとなった高木派を支えたのが「しんせいきのかい」という戦後移民を中心とした関係者だった。そのときの心理的なシコリは生々しく残っているだろう▼渡部和夫評議員会長や上原幸啓会長にも尋ねたが、「もし労働裁判などが起きたとき最終的に責任をとるのは文協だから、判断は慎重に」「本当にそれだけの資金力があるのか」「平均年齢が七十歳を過ぎている提案者たちにとって、二十年後に運営評価を再検討では時間が長すぎないか」などの懸念を持っていたが、検討委員会で修正すれば合意できると思っていたという▼今回の白紙撤回状は性急過ぎないか。選挙のトラウマが癒えるには時間がかかる。それに相互のコミュニケーションも足りなすぎた。しかも、批判的文章を一方的に送りつけるなど、相手に対する配慮が感じられない。相手の土俵で相撲を取るのに、自分のルールを持ち出しても始まらない。日系社会の将来を憂う志をもった有志が集まっているだけに、この顛末は残念だ。(深)