ニッケイ新聞 2007年12月29日付け
ラ米最大で、その医療レベルの高さにおいてもブラジル一、二を争うサンパウロ市西部のクリニカ病院は、クリスマスに起きた火事で予想以上に大きな打撃を受けており、その全面回復には一カ月を要するとみられている。
二十四日夜に発生した火事は、二十五日未明に鎮火したが、二十八日付け伯字紙によれば、救急病棟では二十七日になりやっと約半分の電気系統が機能し始めた。また、同日も、すすや熱感、強い異臭が残り、救急病棟清掃にあたった人の中には頭痛を起したりした人も出た。このため、救急病棟ではコンピューターや冷蔵庫などを廊下に運び出したりした他、清掃作業も早めに打ち切られたりした。また、多くの機材や薬品類がすすで汚れており、清掃やチェックアップ、試運転といった過程を経て、手術室を含む全部署が本来の機能を取戻すまでには一カ月との見解が出された。
このため、病院側は、一月二日からは三交代制を取り、救急病棟の一部での診察などを再開するものの、一月中は、下旬になっても通常の運用能力の五〇%程度の対応しか出来ないとみている。一月中の診察や検査等は基本的にこれまでの患者を対象とし、新しい患者への対応はカーニバル以降になる見込み。
今回の火事で問題となった点のいくつかは、患者の搬送先も含めた非常事態発生時の対応法が確定されていないこと、再予約や薬の必要な人々への情報の遅れや混乱、予算の配分や火災の原因となった電気系統の問題解決を先送りしてきた体質など。
第一点については、当時病棟にいた職員たちの献身的な働きにより大惨事に至らなかったものの、二十八日になってやっとすべての患者の委託先が決まるという状態。また、第二点については、二十六、二十七日にかけて、救急車で何時間もかけて運ばれてきた重症患者への薬の投与さえされなかった例や、何時間も待って再予約さえ出来なかった人、できたけれども半年先の予約しかでいなかった人など、再予約のための場所その他の情報に混乱もあったという。
第三点については、二十七日付け伯字紙に、電気系統修理は二〇〇五年から必要を指摘されていたこと、工事の遅れは資金不足のためではなく手続き上の問題であったことが報じられていたが、その他、同病院の改修予算はほぼ全額投与済みでありながら、州政府も病院内の資金の用途については十分把握できていなかったことなども問題視されている。
これに対し、セーラ州知事は、クリニカ病院向けの予算管理は病院の責任の中で行われていたと発言。年一三〇万人、一日に四〇〇〇人に対応し、年四万五〇〇〇件の手術を行う病院の早期復旧が望まれている。