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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年12月28日付け

 年をとると短気になる、といわれる。このごろの言葉でいえば「キレる」である。最近読んだ日本の雑誌にキレた高齢女性のことが載っていた▼電車のシルバーシート(高齢者優待席)に若い女性が座っていた。乗ってきた高齢女性が居丈高に叱った。「あんた、六十歳過ぎてるの。とっとと立ちなさい」。若い女性は哀しそうに立ち、すぐ下車した。見かねたそばの中年男性が教えた。「あの女性は妊婦でしたよ。バッジをつけていました」。高齢さんは、聞く耳を持たないようにふくれていたという▼日本の電車の車内では、確かに身体不自由者、妊婦、高齢者が付近にいるにも拘わらず、平気で着席し、股を広げている若い者たちがいる▼ひるがえって、サンパウロの地下鉄車内はどうか。数えてみたことはないが、不自由な人や老人を見た場合、席を譲る人のほうがはるかに多い。そこが、優待席でなくても、である。譲るのが身についているといってもいいほどだ。特に譲ってほしくないので、若い者と視線を合わせないようにしている、という元気な年寄りの話を聞いたこともある▼譲ってもらって当然と思って電車に乗ると、いけない顔になる。できれば、そういう顔はしたくないものだ▼ともあれ、昨今、つい、キレる原因になるような材料は周囲にいっぱいある。だが、年寄りがキレたわけをみると、年寄り側に非がある場合が多い。そこを知るべきだろう。日常キレないように心がけたほうが周囲とうまくいくのは当り前である。(神)