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MASPで名画2点盗難=ピカソとポルチナリの作品=無名時代の希少物=両巨匠ドン底の呻きを訴える

ニッケイ新聞 2007年12月22日付け

 サンパウロ美術館(MASP)で二十日未明、パブロ・ピカソの名画「スザンネ・ブロッヒ」(推定価格九千万レアル)とカンジド・ポルチナリの「コーヒー園の労働者」(推定価格一千万レアル)二点が盗まれたと二十一日付けフォーリャ紙とエスタード紙が報じた。事件は犯人三人が、ジャッキーと玄翁で美術館のシャッターをこじ開け、僅か三分間で犯行に及んだ。防犯カメラが犯行の様子を撮影したが、目抜き帽を被ったため犯人の人相まで識別できない。
 ブラジルは、米国やフランス、イラクに次いで名画盗難で狙われる世界で四番目の稼ぎ場らしい。犯行は、いとも簡単に金もかけず遂行した。同美術館から名画盗難を試みたのは十月二十九日、拳銃で武装して侵入、警備員に阻止され失敗。その三日後、二度目の犯行に及んだが発見が早く失敗。三度目でまんまとやったようだ。
 三回とも、同一グループの犯行と見られる。警察は犯人が名画へ直行したことで、教唆と見ている。より高価なルノアーの「青いばら」の前は、犯人が通過した。グループの一人は犯行時、外で監視しインターホーンで連絡していたようだ。警備員は、犯人が展示室のガラス戸を割った音を聞いていないという。
 両名画は、無名時代の作品であることを犯人らは知らないし、その必要もない。盗まれたピカソの作品は、ピカソが空虚と生活苦で悩んだ時期の作品で希少価値がある。ポルチナリの作品は、貧しいイタリア移民の子供に生まれ、農村労働者として社会の底辺で人生の辛酸をなめ尽くしたころの主張である。
 絵画収集家の間では、ポルチナリの作品が奴隷の代替として導入された移民を黒人労働者に托し、背後に蒸気機関車を走らせ古い荘園時代と進歩優先の近代社会の掛け橋にし、移民とコーヒー文化を組み合わせたという見方がある。
 同美術館には、他にも十七億ドルにも達する高価な名画が数々ある。しかし、この二つの名画は人生のドン底からのうめきを感じる作品で、その道の専門家にしか分からない価値があるらしい。