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パンタナールに魅せられ=自然ガイドの湯川宜孝さん=将来情報センター設立を=環境教育を通じて=子どもたちに「誇り持たせたい」

ニッケイ新聞 2007年12月18日付け

 マット・グロッソ州にある世界最大規模の大湿原地帯パンタナールで自然観察ガイドをなりわいとする湯川宜孝さん(37)は、「ある本でフサオマキザルは草食と書かれていたが、生態を観察していて違うことが分った。それ以来、僕は自分の目で見たことしか信用しないようにしている」という。フサオマキザルは、アクリ椰子が密生する島状森林などで生息しているが、実際には、蟹やカエルなどの小動物も食べている。湯川さんは、青少年育成にも意欲的で、将来は、自身が居住している町に情報センターをつくり、環境教育を通して、子どもたちを育てていきたい、という夢を持っている。
 パンタナールでは三百種類もの野鳥を観察でき、鳥観察愛好家の憧れの地でもある。湯川さんのガイドは、植物、サルの生態の面白さ、獣道の歩き方、獣の臭いなど五感を働かせた観察方法を説明するのが特徴だ。
 湯川さんは、北パンタナール近くブラジル中西部マット・グロッソ州の首都クイアバから南に百キロ離れたポコネ市に居住する。
 JICAの開発青年として九二年から九五年までの三年間活動し、パンタナールの牧場ホテルで管理人の仕事を始め、町と離れた森の生活を二年間堪能した。
 その後、州都クイアバに移動して観光ガイドの仕事に就き、車を入手し見聞を広めるため、二年ほどパンタナールを放浪。そのとき英語ガイドをしていたアレッサンドラさん(37)と出会い結婚、娘のあゆみちゃん(2つ)も生まれた。昔から動物や自然が大好きで、今の仕事はその延長上にある。
 ブラジルに移住して今年で十五年目。湯川さんはサンパウロ日本人学校でも講師をした経験をもち、教育にも強い関心がある。
 将来的には、自然観光ツアーで得た資金の数パーセントを第二の故郷であるポコネのコミュニティーに寄付し、パンタナールの情報が得られるビジターセンターを作って、「環境教育を通してパンタナールの素晴らしさを伝え、自分たちの町に誇りを持てるような子どもたちを育てていきたい」という。
 カナダ・モントリオールでの鯨ウォッチング・ツアーや日本人有志と経営する会社「アマゾン・タッチ」を介して、「北南米の自然好きの人が満足するような冒険ツアーを組んでいきたい」と抱負をのべた。
 大自然を撮り続ける写真家でもあり、テレビの自然ドキュメンタリー番組制作のコーディネーターもした湯川さんは、「パンタナールを中心にアマゾンやセラードなどの大自然を紹介する仕事を続けていきたい」と語った。